中長期戦略・中 組織の強い意志が必須
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 前回、社会にあふれる中長期戦略と、その必要性の相対性を論じました。今回は、その前提下、中長期戦略の策定・発信の意義をお話します。

 中長期戦略の意義は、内外との間で組織としての明確なビジョン、ポジションや取るべきリスクなどを共有・議論・対話・検証することにこそあり、その機能・役割が不要または十分に果たせないのであれば廃止または早急な改善が必要だと私は考えます。

 日本の中長期戦略は独自の慣行文化を歩んできており、その一般的、体系的な開示内容や短い対象期間などは独自のものです。特に対象期間のサイクルは短くなり、担当部署常態化や業者常駐化などの専門化が生じています。

 この四半世紀、「VUCA(不安定性・不確実性・複雑性・曖昧性)の時代」「技術革新による不可逆的で非連続で不断な過渡期な時代」うんぬんとさまざまな枕ことばと合わせ、10年、5年、3年、毎年作成するローリング型中長期戦略(実際には単年度事業計画に付録的なものの程度になりがち)となっています。

 熟議や闘議と言われ久しいですが、有識者や諮問機関といったオブザーバーこそ増える一方、民間・公共部門双方の議事録などを眺めてみると、本来自らが起草者となるべき構成員が実際に自ら論理的分析・言語化・資料化し、議論をしているケースは意外にまれです。実際には小なれた事務方の作品を論評・確認する程度です。

 現在の国内の事務慣行とは対照的に、(バーンスタイン『リスク』、デマルコ&リスター『熊とワルツを』など既に古典化していますが)リスクの最大限評価・回避・軽減などを大前提としつつも、さらなる果実の獲得・発展の享受のためにはポジションやリスクの選択が本来、不可避とされます。

 すなわち、組織の強い意志と検証可能な論理性に基づく、組織内外の戦略的・差別的なヒト・モノ・カネなどの資源配分・投入策を組織決定する重要性はますます高まっているのです。

 特にブランド価値の見直しや、大規模設備投資・再編や人材の育成・獲得のためには、一般的に10年以上の時間軸での意思決定は不可欠ですし、その論理性を誤れば一緒に反省・方向転換する意味でも組織内外の方たちに同じ舟に乗ってもらっている必要があります。

 実際に未達による責任訴求で構成員一同のクビが飛ぶケースはまれ(そもそも結果が争点化した時にはいないことも多い)ですが、積極的に権限者や事務方などが取るべき「リスク」でもないことから易きに流れ、実際に策定・開示されているものも形骸化してきているのが実情ではないかと考えます。どのように策定・開示すべきかにも組織としての強い意志が必要なわけです。



野村総合研究所コンサルタント 永井宏典(東京都中央区)

 【略歴】ながい・ひろみち 政府系金融機関に勤務後、2017年から現職。企業戦略や政府の政策立案を支援。米国証券アナリスト、米国公認会計士。高崎市出身。高崎高―慶応大卒。

 2021/1/25掲載

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