エピテーゼとアート 直観とビジョンが鍵に
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 紀元前より医療とアートには深い関わり合いがある。古代ギリシャの芸術家たちは人体の姿かたちを理解し、表現したいという欲求で医師より早くメスを取った。また音楽は気持ちを落ち着かせる効果があり、アルツハイマーの人に昔好きだった音楽を聞かせることで、症状が和らぐことも分かっている。

 エピテーゼは失った外見を整えることでメンタルサポートの役目も果たす。第1次世界大戦中、毒ガスや銃で「顔」をなくす兵士であふれかえった。当時、女性彫刻家がオーダーメードのマスクをつくり、彼らの社会復帰を手助けし、第二の人生のチャンスを与えたのがエピテーゼの始まりと言われている。このように医療とアートは切っても切り離せない関係にあると言っていいだろう。

 私は、指や胸をなくされた方とトランスジェンダーの方向けの専用サロンを展開している。エピテーゼは体の一部を失い、自分のアイデンティティーを確立できなくなってしまった方へ、オーダーメードでおつくりすることで、自他ともに認める自分像をつくりあげ、自信へと変える魅力的なアイテムだと自負している。

 加えてその見た目から医療用品だと思われるが、アート的な要素も大きいと思っている。エピテニストはお客さまが新しい人生を歩めるよう対面でヒアリングをし、職業や家族構成、趣味や行動範囲、癖やファッションアイテムなどの情報を細かく引き出しながらつくり上げる。さらに今の身体からなくされた部位を想像し、精密に再現していかなくてはならない。

 つまり、マクロな視点でお客さまが希望するイメージを広げ、ミクロの視点でシワや血管を再現することが必須となるのだ。ここまで追求すればアーティストであり、アート作品とも言えるだろう。

 先ほど医療とアートは関係すると言ったが、ビジネスとも関係性があるだろう。レオナルド・ダビンチは優れたアーティストであると同時に、医学・科学にも通じる者だった。現代においてようやく解明された事柄を、彼は何百年も前から予想していたのだ。想像するに、アートも科学もビジネスも共通するのは「直観」や「ひらめき」そして「ビジョン」なのではないだろうか。

 私たちは今、不確実で不安定で先が見えない混沌(こんとん)とした時代の中にいる。既存の固定概念は通用しなくなった。そして「集団」から「個」の時代になった。ビジネスにおいては個人が勝てるチャンスの到来だと思う。

 どれだけ未来を読み、先取りしていけるかがキーポイントとなるだろう。多角的な発想で、自分だけがつくれる価値を提供する。まさにアーティストのような直観力とビジョン、そしてそれらをカタチにしていく思考力が問われるのではないだろうか。



エピテみやび社長 田村雅美 甘楽町善慶寺

 【略歴】エピテニスト。2017年、事故や病気で指や乳房などを失った人向けの「エピテーゼ」(人工ボディー)を手掛けるエピテみやびを起業。元歯科技工士。

2021/02/10掲載

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