閉店から見えたこと 無我夢中の日々に感謝
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 今年2月末で、経営していたニットカフェを閉店しました。「コロナ禍での閉店」と言ってしまえばそれまでですが、反省すべきところが多々あり、自分の力不足が大きな要因であったことは否めません。今回は閉店を経験して感じたことを記させていただきます。

 私の経営していたニットカフェは編み物レッスンが中心の店舗で、お客さま(生徒さん)との心の距離がとても近い店でした。私は、生徒さんの顔を見るたびに複雑な気持ちが渦巻いてしまい、心に決めたはずの「閉店します」の言葉をなかなか言い出せずにいました。

 結局、お客さまに伝えることができたのは年が明けてからでした。今考えれば、店を閉めることを周りの皆さんに伝えることができたときに、本当の意味で心が固まったのだと思います。

 そこからの約2カ月はあっという間に過ぎていき、本当にこの店は終わってしまうのかと、冗談を言いながらお客さまと一緒に笑って、心で泣いて、最後の日まで走りました。

 私はとても恵まれているのだと思います。ありがたいことに、何人もの方に店の最後を見ていただけました。「お店は生き物。生かすも殺すも自分次第」と思いながら毎日店を開けていましたが、閉店のその日まで確かに店は生きていました。

 このコロナ禍で店じまいする店舗は悲しくなるほどに多く、最後の別れもできぬまま閉店する他に選択肢のなかった経営者もいらっしゃいます。悔しさや悲しさに押しつぶされそうになりながら、いっそ誰かのせいにしてしまいたい、という気持ちになってしまうことだってあるでしょう。そんな中、自分の言葉で今の気持ちをここに伝えさせていただけることをありがたく感じています。

 閉店を経験して大切だと感じたことは、「どう終わりにするか」ということだと思います。通常の経営者であれば、次なる一手を考え、新たなステージの土台づくりをしながら第1幕の幕引きをすべきなのでしょう。ただ、私の場合は一つ一つです。今は、店をきちんと閉めることが私の大きな仕事であると感じています。「希望や夢で店をつくり、感謝の店じまい」。無我夢中で毎日を過ごせたことに感謝して、第1幕を終わりにしたいと思います。

 そんなことを考えながら、これまで見て見ぬふりをしてきてしまった自宅の片付けや掃除も忘れてはいけないな、と家族の顔を横目にため込んでしまったごみを捨て、苦笑いです。

 先日、何年かぶりに夕方の空をゆっくり見ました。これまで見えなかったものが見えるように。そう願う2021年の春です。



ニット教室運営 新井ますみ 高崎市吉井町

 【略歴】結婚を機に本県に移住。出産を経て、2017年にニット教室運営、ものづくり作家育成などを手掛ける会社「ルココン」を立ち上げた。茨城県出身。

2021/04/10掲載

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