なくならない商店街 まちの復元力 引き出す
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 「シャッター商店街」。前橋のまちなかをこう呼ぶことがある。MDC(前橋デザインコミッション)がある前橋中央通り商店街の1日当たりの歩行者数は、1985年の1万5179人から2007年には1943人に激減した。今の「アーツ前橋」の場所にあった「西友LIVIN前橋WALK館」が06年に閉店。代わって、07年にはJR前橋駅南側に「けやきウォーク前橋」が開業し、まちなかの集客力が縮小した。「衰退」や「消滅」といった文脈でシャッター商店街が扱われるのはだいたいこの時期までのことだ。つまり、「バブル崩壊→大規模小売店舗立地法改正→シャッター商店街」という物語は15年ほど前の昔の話なのである。

 中央通り商店街の1日の歩行者数は、17年でも1977人と変化していない。急速に衰退したのは15年前までで、それ以上の衰退はないままシャッター商店街は生き残っている。車への依存度が高い本県で、ロードサイドへの商圏拡大が続いている状況ながら「なくならない」強さを前橋の商店街は持っている。

 中央通り商店街には100年超の老舗が少なくない。今も商いを続ける店はいずれも市場の変化に応じて柔軟にビジネスモデルを変えている。店頭売り上げだけでなく、法人営業シフトや商流変化、高付加価値化などの戦略転換ができている店が生き残っている。一見同じような商売を脈々と続けているように見える店のビジネスモデルが変化しており、「生き残っている理由」がそれぞれにある。同時に新陳代謝があって、行列のできるニューカマーが複数存在するのは前橋周辺の皆さんはご存じの通りだろう。戦略転換できる老舗と意欲あるニューカマーの総合力で、まちなかは静かにであるが回復傾向にあると感じている。

 「前橋市アーバンデザイン」のキーワードの一つに「エコディストリクト」がある。都市が持つ「レジリエンス(復元力)」によって公正でエコロジカルなまちづくりをしようという意味がある。まさに、消滅しない強さを備えたシャッター商店街のこの15年間が、まちなかのレジリエンスを証明している。

 MDCは魔法のような力を持っているわけではない。まちが持つ「復元力」を引き出し、加速させていく役割だと考える。大事なのは、衰退当初の車社会やモールとの競合という理由で思考を止めないことだ。過去の理由で諦めるのではなく、現在の課題に向き合う必要がある。

 車社会だからこそ、ゆっくり歩いて楽しめるまち、箱モノにはない水や緑を感じる環境、チェーンストアやネットショッピングでは得られない、まちなかならではの買い物や飲食を体験できる「エコディストリクト」に価値がある。そのことをまちの皆さんと確認していきたい。



前橋デザインコミッション(MDC)企画局長 日下田伸 宇都宮市

 【略歴】清水建設で環境ビジネス、東横インで経営戦略、星野リゾートで旅館再生の事業化に携わり、2020年5月から現職。前橋と宇都宮市の2拠点生活。東京都出身。

2021/04/30掲載

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