変化する日常 大切なもの見つめ直す
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 『視点』に掲載された過去3回の原稿を読み返してみると、コロナ下での気持ちや生活の変化などをつづっており、まさに今の世の中の動きに翻弄(ほんろう)されていると感じます。自分の人生でとても大きな節目となる時期の真っただ中にいることが分かります。

 昨年から生活様式が刻々と変化する中で、「近くは遠くなり、遠くは近くなる」と感じることがあります。これまで町内のスーパーで顔を合わせたり、一緒に食事に行ったりするような仲間とは、なかなか会うことができなくなりました。その一方で、インターネット回線を使って、これまで会うことが難しかった遠方の方々と顔を見ながら会話をすることが可能になりました。実際に旅行に行ったつもりで観光地の映像を見て楽しむなど、距離の感覚が変わりました。なんとも不思議で便利な時代です。

 慣れないこともたくさんありますが、これからも日々、さまざまなことが変化していくのでしょう。「当たり前」が「当たり前でなくなる」時代です。

 最近私は動画投稿サイトの「ユーチューブ」を見る時間が増えました。ユーチューブにはたくさんのチャンネルがあり、その内容に特化した方が技術や知識を無料配信しています。

 いつでもどこでも、スマートフォンやパソコンを開くとその中に先生がいるような感覚です。新しい世界をのぞくこともできます。私はというと、ユーチューブを見ながら魚をさばいてステイホームを楽しんでいますし、次は鳥の巣箱を作りたいな、などとワクワクしながら考えています。生活スタイルが変わらなかったら体験することはなかったでしょう。

 編み物のチャンネルもあります。たくさんの方が手元を撮影して編み方を解説したり、オリジナルの作品を紹介したりしています。とても便利なのですが、これまで対面式のレッスンをしてきた私にとっては、正直、物足りなさを感じてしまう部分もあります。

 動画を見て情報を受け取る一方通行の配信は、知りたい情報を得ることはできるかもしれません。しかし、対面でこそ得られる満足感や安心感もあります。それは、言葉や気持ちのやりとりがあるからこそ感じることができるのではないでしょうか。

 編み物は通常、1人でこつこつと取り組むことが多いです。途中で少しの不安があり立ち止まった時に、「大丈夫」という言葉を掛けてもらうだけで安心し、先に進むことができるようになるのです。

 安心感とはいかに人の心を前に向かわせるかでしょう。便利さだけでは埋められないものが必ずあります。こんなご時世ですが、「当たり前」に流されてしまって今まで気付かなかった大切なものを再確認できる、絶好のチャンスなのかもしれません。



ニット教室運営 新井ますみ 高崎市吉井町

 【略歴】結婚を機に本県に移住。出産を経て、2017年にニット教室運営、ものづくり作家育成などを手掛ける会社「ルココン」を立ち上げた。茨城県出身。

2021/06/07掲載

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