エピテーゼ展 生き方選べる社会実現
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 エピテーゼを通じて、誰もが自分らしい生き方を選択できる社会を実現させたい。そう願い、まだ社会に知られていないエピテーゼを広める活動の一環で、2017年から毎年個展を開催してきました。今年は念願がかない、東京で8月末からエピテーゼ展を開くことになりました。

 エピテーゼは、事故で指先をなくした方や乳がんで乳房をなくした方などの「外見」を整えるためのオーダーメードの人工ボディーです。そう聞くと、医療や福祉の領域で全てカバーできると思われるでしょうが、現実は違います。医療では「生きること」が優先されがちで外見を整えることは治療とみなされない場合があります。失った部位や残った機能の度合いによっては、障害に認定されないこともあるのです。

 実際に、交通事故で指先をなくした若い女性が医師に相談したところ「指なんて誰も見ていない。ないことを受け入れて生活しなさい」と言われたケースや、乳がんで乳房をなくした女性が「命が助かったのだから良しとしなさい」と言われ、精神的なショックでうつ病となってしまった例があります。

 現在、指先をなくす方は年間8万人以上いて、乳がんは6万人が発症するといいます。ある日突然身体の一部を失うことは、肉体的な痛みはもちろんですが、精神的なショックも計り知れません。外見は社会生活を送る上でとても重要な要素で、アイデンティティーを形成する大切な部分でもあります。

 最近では人と違う外見を個性として受け入れようという流れがありますが、その前提として自分で複数の選択肢を検討した上で納得して決めることが重要だと考えます。「受け入れる」のと「諦める」のは違いますし、諦めることしか選択肢がないのは社会問題ではないでしょうか。

 エピテーゼ展は、外見に対する選択肢がないことに疑問の声を上げ、「体が欠損してかわいそう」という考え方や語ることも見せることもタブー視されてきたことに切り込み、問題提起し、新しい価値観をつくり上げるのが狙いです。実際にエピテーゼを利用してくださったお客さま数人に焦点を当て、苦しかったことや使った感想、実際に使っている場面を紹介する予定です。

 エピテーゼは外見を整えるだけでなく、精神面にもプラスの影響を与えます。人によって目が小さい、鼻が低い、ぽっちゃりしているといった容姿に関するコンプレックスをメークや衣服でカバーするのと同じように、気持ちを前向きに変えるための一つの選択肢として、広く知ってもらうことを願っています。

 外見で悩んでいる方の希望になること、そして、悩みを理解し情報を共有し合える社会を目指していきたいと考えています。



エピテみやび社長 田村雅美 甘楽町善慶寺

 【略歴】エピテニスト。2017年、事故や病気で指や乳房などを失った人向けの「エピテーゼ」(人工ボディー)を手掛けるエピテみやびを起業。元歯科技工士。

2021/07/18掲載

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