児童の権利条約 「最善の利益」実現を
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 前回まで、子育て講座の経験などから気付いたことを述べてきました。今回は特に気になることを教育に広げ、深掘りしてみたいと思います。

 子どもの発達や権利に関する講座を行うと、親だけでなく教育のプロからも「知らないことが多いと気付いた」「さらに学ぶ必要を感じた」という声がたくさん上がります。それ自体は喜ばしいのですが、よく考えてみると裏に問題がありそうです。他にも気になっていることがあります。大学以前の学校教育の中で「児童の権利条約」(以下、条約)を学んだり、解説されたりした覚えがあるという学生が少ないことです。

 これらの状況から、条約はおろか、子どもの権利について学んでいない、学ぶ機会がなかったという人が相当いるのではないかと推察できます。子どもに関わる仕事をしている人も同様です。この件については、17年ほど前に国連の子どもの権利委員会が日本政府に対し、学校教育のカリキュラムに子どもの権利を入れるよう勧告していました。現場の状況を見ると、問題の指摘を受けても十分な改善がされなかったのではないかと思われます。

 子どもの権利は、その特徴が条約によく表れています。「児童の最善の利益」という基本的な考え方が8回も登場します。大人に対し、子どもにとって最も良いことを考え、子どもの気持ちや意見を読み取ろうと努力する姿勢を求めています。

 これは、全て子どもがやりたいようにさせてあげる、ということではありません。それが子どもの最善ではない場合もあるし、専門家の判断でも子どもの最善にならない時もあります。手間や時間がかかりますが、子どもは一人一人違うので、個別に丁寧に声を聴いて対応することが大切だということです。

 ある調査結果があります。ユニセフの先進国子どもの幸福度ランキング(2020年、コロナ前のデータ)です。日本は総合で38カ国中20位でした。「幸福」は定義が難しいので一概に判断できませんが、気になったのは精神的幸福度(生活満足度の高い子どもの割合、自殺率の低さ)が37位という点です。健康や学力は良好なのですが生活満足度が低値でした。

 大人は、しつけや教育において「子どものため」と思っていろいろと取り組みます。しかし、対象となっている子どもがつらそうに見えたり、苦しそうだったりする場合、「子どもの最善の利益」の視点で再考する必要があります。ご存じでしょうか。子どもは休息や余暇、遊びやレクリエーションの権利を持っています(条約第31条)。東京都世田谷区では、ある中学生が要望して母子手帳に「児童の権利条約」が載ったそうです。この一歩をさらに進め、全ての大人が学ぶ機会をさまざまに設けたいものです。



共愛学園前橋国際大地域共生研究センター研究員 前田由美子 前橋市小屋原町

 【略歴】公立学校教師や専門学校講師を経て、2002年から現職。専門はジェンダー論、家族社会学。NPO法人ヒューマン政経フォーラム副理事長。千葉県出身。

2021/07/22掲載

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