コロナ下の医学生 意識高く病院実習継続
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 新型コロナウイルスの感染拡大によって通常の授業ができなくなり1年半が過ぎようとしています。私が勤務する群馬大医学部でも感染に配慮し、工夫しながら授業を進めています。教育を進める上では医学部特有の悩みがあり、対策も必要です。

 医学生は国家試験に合格するとすぐに現場に出て、医師として患者さんと向き合い、治療に当たります。医師として必要な「現場で使える」知識や技術、倫理観、コミュニケーション能力などは座って講義を聴くだけでは得られません。実際に実験をしてさまざまな刺激による身体や細胞の反応、薬の効果など生の情報を得たり、いろいろなケースを想定した課題を基に討論してコミュニケーション技術を磨いたりすることが欠かせません。その上で指導医の下、患者さんの協力も得ながら十分時間をかけて大学病院や地域の診療所、老人保健施設などあらゆる環境で実習をして初めて医師としての基本的な能力が得られます。

 ところが新型コロナの感染リスクが高まり、実習が極めて難しくなりました。特に病院実習が中止になると、学生は患者さんと十分接する機会を持たないまま卒業し、コロナ禍真っただ中の現場に放り出されます。そのような状況は何としても避けなければなりません。そこで授業はオンラインを中心としましたが、厳しいルールを設けた上で、実習は原則対面で続けることにしました。

 病院実習に出ている学生はクラブ・サークル活動が厳禁なばかりでなく、家族や同居している人以外との会食は許されません。違反が判明した場合は即刻実習中止です。病院実習に出ない学年でも繰り返し感染防御について講義が行われます。制約の多い生活の中、学生たちは高い意欲で学習に励んでいます。また、感染予防のため手洗い・うがいの徹底のみならず、不要不急の外出を自粛し、帰省も最小限にしています。昼食は黙食で、食事の場面以外のマスク着用も徹底しています。

 強制でないにもかかわらず、病院実習に出ている学生の95%以上がワクチンの2回接種を終え、病院実習に出ない学年の接種率も約75%(7月末集計)です。実習を続けていても院内感染は発生していません。学生たちの態度は未来の医師として大変頼もしく感じます。

 一方、孤独感から心の不調を訴える学生もいます。特に初めて親元を離れ、1人暮らしをしている1、2年生が心配です。教員は問題がありそうな学生と面談し、必要に応じてカウンセラーなどを紹介してケアが行き届くように対策していますが、十分かどうかは常に不安です。

 大変厳しい状況ですが、医学生たちがこれまで同様、医師として必要な知識や態度を安心して身に付けられるよう、教職員一同、知恵を絞って教育に当たっています。



群馬大大学院医学系研究科応用生理学分野教授 鯉淵典之 前橋市表町

 【略歴】群馬大医学部卒業後、米国大学勤務を経て現職。専門は環境生理学、内分泌代謝学、医学教育。大学での教育、研究以外に臨床医として診療にも当たる。

2021/09/15掲載

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