新たな食の選択肢 未来に広げたい昆虫食
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 昆虫食品は栄養面の機能性や、環境負荷の小ささ、おいしさといった肯定的な理由で手に取ってもらいたいと思っています。しかし、「食べ物に困るような時代が来たら昆虫を食べるよ」という消去法的な位置付けをされることが非常に多くあります。ただ根本的な問題として、食料危機も環境問題と同じで、起きてから対応するのでは全く間に合わないのです。そういった危機にひんしてから生産、流通、加工、品質管理の体制などを整えることは容易ではありません。だからこそ、食料危機に直面して困る前に、それに対応できる社会を準備しておくことが大切だと考えています。

 私たち20代の多くは「飽食の時代」と呼ばれる、飢えを身近に感じない時代に育っています。スーパーやコンビニエンスストアには余るほどの食品が並び、学生時代にアルバイトをした飲食店では大量の食べ残しを捨てる光景をたくさん見てきました。だからこそ、食料危機が起きるかもしれないと言われても、全くと言っていいほど現実味がありません。

 そんな中、ある方の話に心を強く揺り動かされました。「私は今50代ですが、生まれてから一度も戦争も飢えも経験せず生きてきて、これからもそういった悲惨な経験をしないまま一生を終えられるギリギリの世代だと思っています。これは人類史を見ても極めて異例です。国や生まれた時期が少し違えば、こんなにも恵まれていた一生はなかっただろうと思います。今の私たちは先人が築き上げた豊かさにかまけて、未来の糧まで食いつぶしてしまっているのかもしれませんね」

 私は、自分たちが置かれているこの状況がとても恵まれていること、そして極めてまれであることに気付かされました。そして、この時代を生きる当事者として、食の問題に対して取り組む責任を改めて感じたのです。

 世界の人口が増えたり、環境問題が深刻になったりすることで、食料危機のリスクは確実に高まっています。今と同じような豊かな食が未来もずっと保障されているわけではありません。食の持続可能性を高めるために、フードロスを削減するという下流のアプローチ以外にも、食料原料や生産方法を見直すといった上流でのアプローチも検討すべき時期にきているのではないでしょうか。

 私はその一つとして、食用昆虫をはじめとする環境に優しい代替たんぱくを使った食品を市場に根付かせ、未来の世代にも豊かな食を残していきたいと思っています。50年後、100年後、それからさらに先の未来でも、牛、豚、鳥などの畜肉や魚、穀物、野菜、果物をおいしく食べられるように、コオロギを含む新しい食の選択肢を広げていきたいと考えています。



フューチャーノート社長 桜井蓮 前橋市関根町

 【略歴】高崎経済大発ベンチャーで、昆虫食品を手掛けるフューチャーノート社長。起業は同大在学中で、現在は同大大学院在学。新潟県出身。佐渡高―同大卒。

2021/09/16掲載

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