自立した織物業へ 手探りの道 進み続ける
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 井清織物の母屋とノコギリ屋根工場との間にギャラリー「オルンショップ」があります。糸置き場として使っていた古い部屋をリノベーションして2018年春に完成しました。全体のデザインから施工まで、ほぼ1人で手掛けてくれたのは桐生のパンセギャラリーのオーナー、藤井宜人さんです。井清の歴史とオルンの自由な創作が共存する、そんなイメージで仕上げていただきました。

 私たちがオルンの活動を通じて痛感したのが「伝えることの重要性」でした。良い商品さえ作れば誰かが気付いてくれて自然と売れていったのは昔の話。良い商品を作るのは当然として、そのPRもものづくりと同じくらいの熱量でやるべき仕事だと気付かされました。

 私たちが「伝える」ためにやっていることはいくつかあります。会員制交流サイト(SNS)では仕事風景や告知を。毎月更新しているブログではその都度感じたことや報告をある程度の長文で。リーフレットと呼ばれる小冊子ではオルンの雰囲気を。クラフトフェアや百貨店などへの期間限定出店は売り上げを図るだけでなく、人の集まる場所に出向くことでオルンの知名度を高めたり、消費者の声を聞いたりするために。

 そして、工場脇のオルンショップではいろいろなアイテムを一堂に見てもらうことでオルンの世界観を感じてもらっています。もちろん商品について説明したり、着物のコーディネートを提案したり、時には織物業に対する思いなどを伝えています。お客さまの中には実際に工場を見て、ようやく私たちがデザインだけでなく現場で作業をしているんだと納得される方もいます。お客さまとの会話から得られる情報を日常的に積み重ねることが、私たちのものづくり感度を向上させてくれているような気がします。

 家業を立て直したいと突然帰郷して今年で16年目。生き残りの道を探ろうと夫婦で毎日必死にやってきた結果、織物業としての仕事の範囲が父の時代とは比べものにならないほどに広範囲になりました。小さくとも自立した織物業へと生まれ変わるために、織物業とはこうあるべきだという固定概念を一つ一つ崩していくしかありませんでした。悪目立ちしていないかと、周囲の視線が気になってしまう時は「もし会社が駄目になった時にやり残したことで後悔することがないように」と夫婦で確認することで乗り越えてきました。

 これまで私たちオルンの歩みをつづってきました。小さな規模の経験談ばかりですが、同じような課題を抱えている人に何かしらのヒントになればと願っています。本欄を通じてオルンの帯や織物に興味を持っていただけたら幸いです。お会いできる日を楽しみにしております。



OLN代表、井清織物代表 井上義浩(桐生市境野町)

 【略歴】(いのうえ・よしひろ)井清織物4代目。大学進学で上京後、テレビ番組制作などを経て30歳で帰郷し、同社入社。2014年、妻と織物の生活雑貨ブランド「OLN」を立ち上げ。

2021/09/19掲載

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