水道行政の持続可能性㊦ 先送りできない負担増
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 8月末に公表された厚生労働省の水道施設整備費補助の来年度概算要求金額(東日本大震災復旧関連予算除く)は前年度比6.5%増の62億円で、これは直近の全国の公営企業水道事業総収益の約0.2%の規模でしかありません。

 前回、水道行政において、数十年間にわたり政府ビジョンなどで同一の課題が指摘され続けていることや、政府の再配分機能が相対的で地方自治体が経営主体として強い責任と裁量を持つ構造などについて議論しました。

 国立社会保障・人口問題研究所の推計によると、2050年には全国の約半数の居住地域で人口が半分以下となり、人口規模が小さい市区町村ほど減少率は高くなります。加えて、洗濯機などの節水タイプの普及や食生活の変化などにより1人当たりの水道使用量は00年をピークに減少傾向です。地域によっては自然災害の激甚化や頻発により突発的な整備予算を確保する必要も想定されます。

 他方で、施設の大量更新期を迎える前の現時点でも、3分の1の公営水道事業体は給水原価が供給単価を上回っている状況です。水道事業の業務委託・運営委託などが耳目を集める一方で、一部の地域ではひっそりと将来の利用者への料金転嫁が進展していることになります。

 この現状に対し、先進技術やサービス革新に全ての解決を期待することは困難です。水道分野でも人工知能(AI)やスマート水道メーターといった技術革新がしばしば話題になりますが、多少の最適化は図られても、土木工事や設備投資の抜本的な削減や財源創出は期待できません。

 最近のコンパクトシティー議論にはさまざまな概念が含まれていますが、具体化した際には青森市の失敗例に象徴されるように、代償として追加コストや公共事業などがついて回ることが一般的です。また、将来の規模縮小を予測して地方自治体が水道普及率や設備投資を見直すこと、つまり1人でも住人がいる中で思い切って運営・整備更新を停止しようと判断することは現時点では想定できません。

 美談で語られる、カンボジア首都近郊での安全な蛇口水を含む広域水道サービスが実現した「プノンペンの奇跡」も、北九州市による技術支援に加えて、日本政府の数十年間の設備費用の援助と現地市民に対する水道料金徴収・転嫁があってこそと考えています。

 人材の採用育成や設備投資、財務の計画をしっかり立て、その上で想定される将来の予算の差異や積立費用を適切に水道料金に転嫁することが必要です。それを将来の利用者の水道料金などに先送りすることなく、現在の利用者として積極的に受け入れていくことを前提にしてのみ、水道行政の持続性は確保できると考えます。



投資・投資助言業役員 永井宏典(東京都港区)

 【略歴】(ながい・ひろみち) 政府系金融機関、野村総合研究所を経て、2021年4月から現職。米国証券アナリスト、米国公認会計士。高崎市出身。高崎高―慶応大卒。

 2021/9/22掲載

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