誇りを羽織るヒーロー 微力でも誰かのために
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

 私の「視点」は今回が最終回。最後に伝えたいことは何だろう、と頭をぐるぐると巡らせ、たどり着いたテーマは「感謝」である。

 起業してから、「過去に戻れたら」と思ったことは一度もない。起業前はよく思っていた。しかし、今となっては「そんな苦行はお断り」とすら思っている。その時その時の偶然とも奇跡とも言えるタイミング。これをまた全て同じようにつかみ取るなんてことはもう二度とできないだろう。努力では補えないその奇跡の数々を、また同じようにたどることなど到底できるものか、と思うのだ。

 他の誰も持っていない感性をまとった、金髪で丸眼鏡の糸屋の社長。すご腕の調理人でありながら、お祭りなどでは焼きそばを焼くディズニー好きのあの人。高校生の頃からの縁で家族とも言える付き合いになった、目立つのが苦手なようで実は目立ちたがり屋な誰よりも優しい1歳上の彼。キャンプの楽しさを教えてくれた、真面目なようでふざけている弟のような親友。芸人として自分の使命に駆られ頭がいいのに頭の固い、器用そうで不器用な大切な友人。自分には関係ないことでも全力で他人の力になろうと精進してくれる、高身長の野球にたけたピカイチな営業マン。たこ焼きやハンバーグを全国の皆の笑顔につなぎ続ける偉大な経営者の先輩たち。そして私をいつも救ってくれる愛すべき仲間たち。

 例を挙げればまだまだ切りがないのだが、経営者として未熟すぎる私はこの全ての出会いに感謝している。何一つ欠けても、今の経験も現状もなかっただろう。交わした言葉も時間も、後悔も感動も、その全てが今をつくっているのだ。

 子どもの頃に憧れたヒーローたちは強い敵と戦いながらつまずいて傷ついて、それでもたくさんの経験と出会いを基に最終回に向けてどんどんと強くなっていく。それと同じように、出会った一人一人が持つ個性と経験に触れ、私も確実に強くなっているのである。もしかしたら強くなっているなんてただの勘違いで、身にまとうだけのハリボテのマントなのかもしれない。しかしそれを羽織る責任があると思っている。

 頂いた数々の言葉や経験。お客さまや関係者の皆さまと重ねた多くの時間。それらを基に進んできた過去と未来。何もなかった私が、誰かにとってのヒーローになれるならば胸を張ってカッコつけようと思う。必殺技も決めポーズも特殊な能力もない、カッコ悪いヒーローは、何もなかったあの頃とは違う、この大切なマントをひらりと肩にかけて目いっぱいカッコつけ続けようと思う。

 おそらく訪れることのない経営者としての最終回に向けて、誇るべきこのマントと共に立ち向かうのだ。



ベイビーズ&マタニティ・Cafeラルゴ代表 高久保渉 桐生市琴平町

 【略歴】2015年、同店オープン。母親向けイベントなどを開催し、育児をしやすい街づくりに取り組む。市民有志団体「Sukiryu」代表。桐生市出身。

2021/09/25掲載

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
関連記事