コロナワクチン接種 複数の対策で生活守る
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 新型コロナウイルス感染症の波は来るたびに大きくなり、デルタ株のまん延で集団免疫の獲得はさらに困難になっています。先の見えない不安の中、群馬県は9月13日、コロナ対策に関するロードマップ(具体的計画を時系列で表した行程)を発表しました。

 9月3日の政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会では、数理疫学者が今後の感染予測を発表しました。それによると、一つの流行(150日間)でのコロナ感染死亡者数をインフルエンザと同程度にするには、ワクチン接種率が75%の段階では人と人の接触を減らすためにイベントの開催制限や飲食店の時短営業が必要です。接種率が80%になるとマスクや消毒、手洗い、換気、3密を避ける生活を続ければ、インフルと同等の結果が得られる可能性があるとされました。

 県はロードマップの数値目標の一つに接種率80%を挙げました。しかし、ワクチン非接種者(約40万人)を中心に感染拡大が続いて医療の逼迫(ひっぱく)が発生するので、接種率が90%にならない限り、何度でも緊急事態宣言発出の可能性があります。

 緊急事態宣言措置で感染拡大のペースを遅くすることはできても、一定割合のワクチン非接種者が免疫を獲得するまで感染が続くので、一つの流行期(150日間)での総死者数はあまり変わりません。総死者数はワクチン接種率に影響されるため接種率を高める意義はそこにあるのです。

 経済学者は、緊急事態宣言を1回発出することで約5兆円の損失になると計算します。医療提供体制が現状のままだと宣言の発出回数は多くなり、経済的損失が大きくなって失業者を増やし自殺者を増やすことになりかねません。コロナ禍のために発生したと推定される自殺者の推定余命(性別と年齢で計算)を足し上げると、コロナ感染死者のそれと同等か長いそうです。しかし医療提供体制を拡充することで、宣言の回数を減らすことが可能です。

 県は医療提供体制を逼迫させることなく社会経済活動を促進しようと、独自のワクチンパス(仮称)の導入もロードマップに載せました。しかし、運用で解決すべき問題をいくつか含んでいます。例えば、ワクチン接種完了者であっても時間の経過に伴って抗体値は低下するし、ワクチン未接種者でも感染で免疫を獲得して抗体値が十分高いかもしれません。既にワクチンパスを導入している諸外国の経験を参考に本県の実情にあった運用が望まれます。

 ワクチンは高い有効性が確認されていますが、万能ではありません。それを複数の対策で補えれば、健康と暮らしを守り、望む社会を実現できるでしょう。それを可能にするのは、県民が何を望み、一人一人がどう行動するかです。私たちは今、分岐点に立っています。



元群馬大医学部保健学科准教授(微生物学) 佐竹幸子 高崎市栄町

 【略歴】微生物学が専門で元群馬大、同大大学院准教授。元NPO法人EBIC研究会理事長。米CDC(疾病対策予防センター)で研究員の経験もある。福岡県出身。

2021/09/26掲載

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