本白根山の噴火 古来の霊場、恵み今も
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

 1月23日に発生した本白根山(標高2171メートル)の噴火は、「3000年ぶりの噴火」と報道等でも言われ、今までは静穏状態を保っていた山の突然の噴火に驚いた人も多かった。湯釡を有する白根山のように噴火を繰り返した山とは対照的で、本白根山の噴火は史資料にも全く登場してこなかった。そして、噴火による直接の影響は温泉街には全くなく、温泉や宿泊、観光を楽しむことに何ら支障はでていないことを申し添えたい。

 本白根山は春から秋はハイキングや紅葉、冬はスキーと一年を通じて楽しめる。コマクサをはじめとした多種多様な高山植物やニホンカモシカなどの野生生物に出合えるほか、火口の構造土や鏡池の亀甲構造土など地質的にも珍しい景観を有している。草津を代表する自然の宝庫の一つとして多くの人が登山した経験を持っているだろう。

 そして、深田久弥の随筆「日本百名山」にも登場する草津を代表する山である。現在は雪と噴火の影響で閉ざされているが、願わくは早く落ち着いてこれらの自然環境がどのようになっているかも確認したい。

 また、本白根山はその名の通り、白根山よりも古い山として知られている一方、明治初期まで白根神社の奥宮が鎮座していたことを知る人は少ない。小さな社ではあったが、古来山岳信仰の霊場として多くの修験者が訪れていた。彼らは麓の草津で山に祈りをささげ、山を目指した。おそらく草津から、よく見える山として信仰の対象とされていたのだろう。

 しかし、明治以後は白根山が信仰の中心となり、奥宮も白根山に移されている。もちろん、白根山も古くからの信仰の場所だった。噴火のたびに修験者は湯釡内で命がけの加持祈祷(きとう)を行っていたようだ。

 このことは1882(明治15)年に白根山の湯釜付近が噴火し、ドイツ人医師ベルツ博士が調査のため噴火する湯釡に入った時、もうもうと立ち上る噴煙の中で、祈りをささげる白装束の一団に遭遇していることからも裏付けられる。ベルツは相当驚いたのだろう、自身の日記にもこのことを記している。

 この二つの山への信仰に関して、火口付近での祈祷や神具の奉納等が行われていると思われるが、場所が場所だけに調査も十分にはされていないのが現状である。

 噴火の影響はさまざまなところに波及して計り知れない。しかし、草津の人たちは、常に山と向き合って生きてきた。噴火という災害をもたらす一方で、温泉の豊かな恵みを与えてくれているからに他ならない。噴火の被害や風評被害等の影響をさまざまな工夫で乗り越えて行く温泉街に多くのエールを送ってほしい。



草津町教委学校教育係長 中沢孝之 草津町草津

 【略歴】草津町役場に入り、町温泉図書館司書などを務める。全国組織の図書館問題研究会で活動。郷土史やハンセン病についても関心が深い。和光大人文学部卒。

2018/02/13掲載

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
関連記事