手作りの甲冑 祭り盛り上げ歴史発信
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 さて、何を書こうか―。と考えていると映画『関ケ原』の冒頭のナレーションを思い出しました。ヘンリー・ミラーは「今君は何か思っている、その思いついたところから書き出すとよい」と言いました。そんな具合で進めようと思います。

 子どもの頃から歴史が好きでした。きっかけは5、6歳のことです。保育園が終わると祖父母の家へ行き、一緒にテレビを見ました。相撲と時代劇がほとんどでした。気付けばたんすから和服を持ち出し、棒を振り回していました。ある時、時代劇で刀鍛冶の場面を見て「これをやってみたい」と思ったのです。

 今はほとんど見られなくなりましたが、祖父母の家は当時、まきを燃やして風呂を沸かしたりご飯を炊いたりしていました。火の中に鉄の棒を入れ、金づちでたたくと真っ赤な火の粉が舞います。それがとてもきれいだったのを覚えています。風呂が沸きすぎて熱くて入れない、とよく言われたものです。それくらい夢中でした。今思えば、モノを作る楽しさはこの時に知ったのかもしれません。

 甲冑(かっちゅう)製作を始めたのは、たまたま武者行列に参加させてもらう機会があり、自分で作れそうだなと思ったのがきっかけです。金属をたたくと曲がっていく楽しさに夢中になり、手作りの甲冑を着て各地の祭りやイベントで刀ややりを振り回していました。

 次第に甲冑製作に意義を見いだしました。歴史祭りは年々観客が減り、若い人の参加も減っています。自分にできることはないだろうかと考えました。祭りを盛り上げるには観客の皆さんに喜んでもらい、参加者も楽しめ、そして開催が待ち遠しくなるような仕掛けが必要です。次世代につないでいくことも大切です。できれば留学生ら外国人も巻き込みたい。そう考えると、甲冑製作によってできることはたくさんあると気付いたのです。

 そんな意気込みで2019年4月、北群馬甲冑工房を立ち上げました。皆さんに楽しんでもらえるよう準備を進めていた中でコロナ禍となり、思うように活動できなくなりました。落胆する気持ちもありましたが、この状況でも祭りや地域のためにできることはないか、少しでも群馬の歴史の魅力を発信できることはないかと考え続けました。そこから新しいアイデアが生まれました。それについては次回以降、紹介していきたいと思います。

 北群馬甲冑工房には夢があります。小学生の頃、映画『天と地と』のビデオを何度も見ました。漆黒の甲冑と深紅の甲冑を身にまとった武士たちが擦れ違う壮大な場面に鳥肌が立ったのをはっきり覚えています。「いつか皆さんと一緒に、手作りした甲冑でそんな壮大な祭りをしたい」。夢の実現に向けて活動していきます。



北群馬甲冑工房代表 吉沢洋紀 吉岡町北下

 【略歴】企業で働きながら有志でつくる本格格闘甲冑集団・式で演舞用の甲冑作りを開始。2019年に北群馬甲冑工房を設立した。御城印なども製作。前橋工業高卒。

2021/11/18掲載

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