国民ID番号 日常生活で便利さ実感
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 2008年にフィンランドに移住しました。当時、日本にもオフィスを構えていたフィンランド企業に勤務していて、本国に転勤になったためです。引っ越し後すぐに、会社が手配したエージェントと半日かけてさまざまな登録手続きをしました。

 まず地方行政局に住民登録し、その時点で国民としてのID番号が発行されました。日本のマイナンバーのようなものです。この番号は生年月日を示す6桁とその他の4桁の番号で構成されています。この番号があることでいろいろな手続きがどれほど便利になるかということは、この時点では全く分かっていませんでした。

 番号を手にして、次に向かったのは銀行です。もらったばかりの国民ID番号を伝え、銀行の担当者がそれをコンピューターに入力するとすぐに私の情報が画面に表示されました。住所や電話番号、名前など基本的な情報で、日本でいえば口座開設用紙に記入するような内容です。それを画面で確認した後、情報が既に記入された用紙がプリントアウトされ、私は内容を確認してサインをするだけで口座開設の手続きが完了しました。この時、その効率の良さに大変驚きました。

 この後、税務署や社会保険事務所での登録、さらにはクレジットカードの申し込み、頻繁に利用すると思われるスーパーやデパートのメンバーズカードの申し込みまで、全ての手続きが用紙に自分で必要事項を記入することなく、国民ID番号を伝えるだけでスムーズに終わりました。

 効率の良さは、フィンランドで最初に住んだアパートメントから次のアパートメントに移る際にも改めて感じました。引っ越しの際に面倒な手続きの一つが各種の住所変更です。フィンランドでは、郵便局に住所変更の届けを出すだけでほとんど全てのものにその変更が反映されます。つまり、郵便局に配達先の変更届を出し、銀行に住所変更を届け出て、クレジットカード会社にも、と別々に手続きをする必要がありません。唯一、郵便局での変更登録が反映されなかったのが購読していた雑誌の送付先でした。雑誌の種類によって異なりますが、とにかく、この一つ以外は全て郵便局での住所変更届が反映され、便利さを実感しました。このように、国民ID番号があることによって生活のさまざまな場面で効率化が図られているのです。

 日本ではマイナンバーの用途が限られているせいか、マイナンバーカードの交付もあまり進んでいないと聞きます。フィンランドのように日常生活で便利さを実感できる場面が増えれば、おのずと浸透するのではないでしょうか。普及を進めるに当たり、フィンランドの事例が参考になればと思います。



フリーライター、翻訳家 松本由美 ヘルシンキ

 【略歴】ノキア在職時の2008年にフィンランドへ転勤。退職後はフリーランスで執筆、翻訳、SNSを通じてデジタルマーケティングなどに携わる。太田市出身。

2021/11/19掲載

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