観光を研究する 興味追求し社会に還元
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 私の仕事は「観光を研究する」ことです。研究というと、白衣を着て薬品を使う実験、地震に備えて地面や建造物などの強度を調べる実験、はたまた小難しい本を読み解くなど、さまざまなイメージがあるかもしれません。

 私の場合は、観光にまつわるさまざまな事柄を文献やアンケート、聞き取りなどを通じて調べ、課題解決の道を探っています。くしくもコロナ禍によって、観光に対して社会的な関心が集まったのではないでしょうか。これまで単なる余暇活動の一つとして捉えられていたと思いますが、パンデミックによる自粛や自粛疲れの影響が明らかになるにつれ、観光業界が地域にもたらす社会経済的なメリットとデメリット、観光者の動機や行動など多くの問題提起がなされました。他にも、観光活動は環境問題、南北問題、ジェンダー問題など、社会全体における課題と深く関わっています。これが「観光は社会を映す鏡」と言われる理由かと思います。

 さて、分野を問わず、研究テーマを決めることは難題です(研究生活が長くなると自然と決まってきますが)。前述のように観光は対象とされる現象が広く、選んだテーマには長ければ年単位で関わることになるので、テーマ選びはとても重要になってきます。

 私のメインの研究テーマの一つはエスニックマイノリティーと観光です。エスニックマイノリティーの方々の固有の文化の観光利用が文化の継承や自民族へのプライド、地域振興に与える影響に関する研究をしています。

 テーマ選びに迷ったとき、必ず考えるのは「自分はこのテーマに本当に興味があるのか」ということです。大学院博士課程在学中に指導教官に「いい研究というのは、自分が知りたいという気持ちがあるもの」と言われて以来、これが私の研究に対する座右の銘になっています。一方で、その時々の社会に求められているテーマもあります。例えば今の観光研究ならコロナ関連やSDGsなどでしょう。

 研究生活が長くなってきた現在、自分の個人的な興味と、社会に求められているテーマをどう組み合わせるかが新たな課題であり、楽しみでもあります。どんなテーマであれ研究では膨大な資料やデータを扱うので、興味がないと進みません。正直興味があるテーマでも途中で投げ出したくなることがあります。それでも、最後に論文として受理されたときは、1人でガッツポーズをしてしまいます。

 旅行が好きという単純な理由で研究分野を選びましたが、知りたいことを知り、それを論文という形で社会に還元できることに感謝して、少しずつでも前に進んでいきたいと考えています。



高崎経済大地域政策学部教授 丸山奈穂 高崎市

 【略歴】専門は観光人類学。2020年から現職。大泉町のブラジルタウンや富岡製糸場も研究対象にする。徳島県出身。米・テキサスA&M大大学院博士課程修了。

2021/11/21掲載

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