社会的健康 心の病気も予防できる
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 学ぶことで病気を予防できる。これは身体の病気に限ったことではなく、心の病気も同様だ。その理由と具体的な方法をお伝えしよう。

 特に、うつ症状は、認知症や発達障がいの二次障害として問題になっている。認知症で物覚えが多少悪くなっただけでは、問題は少ない。発達障がいも、人とコミュニケーションがとれないだけでは、問題は少ない。両者とも、それをきっかけに孤独化し、うつに陥り深刻化する。ゆえに、深刻化の前に予防が必須だ。

 うつ病などの心の病気の原因として、感情と行動のギャップが考えられる。赤ちゃんはうつにはならない。それは、自分の感情を素直にいつでも表現できるからだ。悲しい時、怒っている時は泣く。うれしい時、楽しい時は笑う。感情と行動が一致している。この状態では、人は、心の病気にならない。

 大人になると、感情と行動の乖離(かいり)を要求される。悲しいのに泣いてはいけない。怒っているのに言葉に出してはいけない。うれしいのに、歓喜の声を上げてはいけない。社会に出るとそんなことがたくさんある。

 そして、人は、その感情と行動のギャップにだんだんと気づかなくなり、自分の悲しみ、怒り、憎しみ、喜びなどの感情にさえ気づかず麻痺(まひ)していく。すると、感情をつかさどる大脳旧皮質と行動をつかさどる大脳新皮質のバランスが取れなくなり、心の病気を発症するのだ。発達障がい者のように敏感で繊細な人ほどそのギャップに耐えられず、うつに陥りやすい。

 昔は、地域に、感情表現できる場があったので、今より精神疾患が少なかったと推測する。子ども同士がけんかして感情をむき出しにしても、陰湿ないじめにならず、皆が寛容に見てあげられる環境があった。祭りでは上司も部下も、町長も町民も立場に関係なく、お神輿(みこし)を担いだり、お酒を飲んだりして、ぶっちゃけて話すことができた。

 そのような感情表現できる場が少なくなった現代社会で心の病気を予防するためには、どうしたら良いか。自分の感情に気づき、それを受け入れることを意識して行う必要がある。まずは、自分の心の声に耳を澄ませてほしい。「自分は、怒っているのか、悲しいのか、寂しいのか」などなど。誰でも他者のことはよく分かるが、自分の感情ほど分からないのだ。

 自分の心の声に素直に耳を傾けてみよう。どんな嫌なマイナス感情もなかったことにする必要はないのだ。そして、自分の感情をそっとノートに描いてみよう。そんな感情を持った自分を大切にしてあげよう。

 生きづらさを抱える人たちが、自らの感情に気づき、それを表現できるまちをつくっていきたい。そのことは、社会的健康、まち全体の健康につながると信じている。



総合医 関根沙耶花 太田市金山町

 【略歴】勤務医10年の後、前橋市で開業。2017年3月に太田市に移転。予防医学を軸に、「自立した健康」を目指す。前橋女子高卒、自治医科大地域医療学大学院修了。

2018/04/06掲載

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