デジタルヘルス 解決の使命持ち実践を
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 デジタルヘルスと聞くと、医師や薬剤師と言った限られた医療従事者、専門家しかできないものだと思われる方もいるかもしれない。全くそんなことはない。ヘルスケア領域で解決したい課題が明確にあれば、誰でもITと組み合わせたデジタルヘルスを実践することは可能だ。

 デジタルハリウッド大大学院デジタルヘルスラボ所属の守矢奈央は、学部生から大学院へ進学し、研究室に入った。守矢が取り組む課題は、多汗症に悩む人向けのファッションの開発だ。守矢は医療従事者ではない。もともとファッションデザイナーの卵として、ファッション業界で着々と実力を伸ばして来た。

 なぜファッション業界の人がヘルスケアなのか? と疑問に思うかもしれないが、守矢自身が多汗症であり、一般の服が合わなかったり、おしゃれができなかったりした。汗っかきをバカにされることもあり、悩んでいた。

 多汗症とは、要は重度の汗っかきのことで、汗の量やタイミングをコントロールできず生活に大きな支障を来す。根本的な原因は不明で、限られた対症療法があるのみで、根本的な治療法はない。根本的な治療法がない病気には医師も関心が薄く、看護師も親身に寄り添ってはくれるものの根本的に症状が解決する訳ではない。

 誰も解決策を作ってくれないのであれば、自分で解決するしかない。守矢は多汗症向けのファッションブランド「athe」を立ち上げ、ファッションを通して多汗症の課題を解決することを決意する。構想だけ、まさにゼロからのスタートであり、第一歩は速乾性や通気性に優れた生地素材を開発から始めた。

 生地開発に必要なコストはクラウドファンディングで募集した。潜在的に多汗症に悩む人は多く、ソーシャルメディアを通してプロジェクトに共感、応援する人が集まり、クラウドファンディングは見事成功した。これからが商品開発のスタートだ。

 ヘルスケアにおける課題解決の主役は医療従事者であるとは限らない。絶対に解決したいという明確な使命感こそが何よりも代替不能な原動力である。ヒト、モノ、カネ、情報と言ったリソースで、足りないものは、明確な意志があれば後から集めることができる。現在、クラウドファンディング、ソーシャルメディア等、リソースを集めるツールはいくらでもある。

 「○○が足りないからできない」と、できない理由や言い訳にするのではなく、「○○が足りないから、こうやって集めよう」と考え、実行すれば良い。課題を解決するのに、今ほどやりやすい時代はない。「明確に解決したい課題」、それがあれば、デジタルヘルスは誰にも広く開かれた世界だ。あなたもデジタルヘルスの実践者になれる。



お茶の水循環器内科院長 五十嵐健祐 東京都千代田区

 【略歴】老年病研究所附属病院などを経て、2014年に東京都内で開業。デジタルハリウッド大特任准教授。高崎市生まれ。高崎高―慶大医学部卒。

2018/04/13掲載

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