介護施設での虐待 根源は現場軽視の運営
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 インターネットで「群馬県 老人ホーム」と検索してもらいたい。すると関連キーワードに「群馬県 老人ホーム 事件」とひもづけされてしまう。なんとも由々しき事態である。ここ群馬で介護事業を運営する身として見過ごすことはできない。今回は介護現場で起こりうる虐待について私なりに考察してみたい。

 何年か前の報道で、介護施設に設置された隠しカメラの映像に衝撃を受けた方も少なくないであろう。夜勤業務に従事する介護スタッフが高齢者を何度もベッドに押さえつけるなどしていた。別の施設では高層階ベランダから要介護者を転落死させた事件も発生している。県内においても介護スタッフがこぶしや頭などで高齢者を複数回殴る暴行事件も起きてしまった。

 このような報道を見るたびにある思いが脳裏をよぎるのだ。「被害にあったご老人がかわいそう」「一線を越えてしまった介護スタッフへの怒り」。もちろんそうであるが、私は「事件を起こしてしまった加害者に全ての非をかぶせるのは筋違い」と考える。虐待の被害者に共通していることは「認知症罹患(りかん)者」ということだ。限られた員数の中で夜間の介護を担う現在の介護現場。夜勤者は分刻みで病棟内を走り回っている。おむつ交換、トイレ誘導、ナースコール、薬の内服介助、巡視、記録、洗濯、尿・便失禁への対応、着替え、徘徊(はいかい)高齢者の見守り。仮眠を取っている暇などない。

 目まぐるしい過密スケジュールの中、認知症高齢者の予測できない行動が仕事の流れを乱す結果となる。乱された結果、介護スタッフはストレスに襲われパニック状態に陥る。夜間は介護スタッフの人数も減るため助けを求める同僚も少ない。これが現在の日本の介護現場である。

 私は虐待が発生した施設側、運営側に原因の一端があると言わせていただきたい。事件を起こした介護スタッフも初めは志を持ってこの業界に飛び込んだと思う。最初から虐待してやろうなどと考えてはいないはずだ。認知症という疾患への教育、服薬による症状コントロール、介護の工夫による認知症状の軽減など運営側が認知症と向き合い、成すべき教育や体制作りに取り組んでいれば介護現場に虐待という発想は生まれないのではなかろうか。

 経営者が利益ばかりを求め「なんでもかんでも受け入れどうぞ。あとは現場任せ」では現場はたまったものではない。私の過去の介護経験は今の介護経営に大きな意味をもたらしている。これから介護施設を利用される際はぜひ事前に見学に出かけてもらいたい。スタッフの電話対応、施設の明るさ、空気、におい、清潔さ、職員の振る舞い。どれも経営側が日ごろから現場目線で教育をしていないとならない事柄である。運営側の無関心が虐待の根源である。



介護事業「ホクセイ」社長 堀内元 太田市鳥山中町

 【略歴】介護の現場経験後、29歳で独立。にじいろ太田・こもれび太田を営む。介護福祉士、ケアマネジャー。北海道出身。早稲田大人間科学部健康福祉科学科在籍中。

2018/04/29掲載

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