ボルドーワイン 時代捉え前進する伝統
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 世界で最も有名なワインの銘醸地、ボルドー。

 フランスの南西部、大西洋に面したジロンド県に位置し、昨年ベストシティー2017にも選ばれ、ワインだけでなく観光においても世界の人々を魅了している。街自体が世界遺産になっている市街は、三日月に湾曲している川沿いにあるため「月の港」と呼ばれている。何世紀もの間、ボルドーワインを積んだ帆船が大西洋に向かって川を下っていくための拠点の港であった。偉大で重厚な歴史的たたずまいの街並みは、ワインを主として発展してきた富の象徴として今も静かに時を刻み続けている。

 ボルドーワインが一躍発展したのは、12世紀、ここのアキテーヌ女公が後のイングランド王となるアンリ2世と結婚、ボルドーがイングランド領になりイギリスへのワインの輸出が盛んになったことに始まる。当時イギリスではボルドーワインのことを「クラレット」と呼んでいた。昔の赤ワインは今のように濃い赤色と違い、淡い色をしていたので、今でもボルドーではその淡い赤色のワインをフランス語で「クレレ」という位置づけで作り続けている。

 ロゼより赤く、赤ワインよりも淡い、透明感のあるなんとも言えない美しい赤色を帯びたクレレは、800年以上もたった現代において、世界的ロゼワインブームとともに人気上昇中である。

 ボルドーワインは今大きく変わりつつある。「値段が高い」「敷居が高い」というイメージから、「コスパがいい」「普段飲みできる」というカジュアル路線に大きく方向転換しつつある。世界のワイン産地で研さんを積んだ新世代の生産者たちが、最新技術とボルドーワインの伝統を組み合わせ、互いに協力し合いアイデアや情報を共有しカジュアルで質の高いワインを生み出している。

 女性の活躍も大きい。以前のボルドーはシャトー(ワイナリー)訪問をするのにさまざまな手続きが必要で観光客に門戸を閉ざしている所が多かったが、今では女性醸造家を中心に率先して門戸を開き、ワインツーリズムイベントを展開している。それに呼応するかのように有名シャトーもレストランや宿泊施設を建設し、観光客を受け入れるようになってきた。

 ボルドー市街にはワインを楽しみながら体感覚で学べるワイン博物館「シテデュヴァン」が2年前に開館し、観光スポットになっている。昨年高速鉄道TGVがパリ―ボルドー間を最速2時間に短縮し、さらに近い観光地になった。

 日本でもボルドーワインの消費量が右肩上がりで復活してきた。日欧EPAによる今後の値段の変化も注目されている。世界のワインの中心地は、伝統を受け継ぎながらも時代のトレンドを的確に捉え、変化を受け入れ、今も未来に向けて前進している。



コミュニケーションデザイン代表 堀口瑞予 東京都千代田区

 【略歴】日本航空で客室乗務員や教官を約20年間務めた後、独立。明治大リバティーアカデミー講師。ワイン講師、接客コンサルタント。高崎女子高―明治大卒。

2018/05/13掲載

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