母語と外国語の習得 過程の違い知り学んで
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 人間は生まれてから死ぬまでことばと格闘します。その意味において、ことばの学習は生涯学習です。

 母語獲得には一定の習得順序が想定されています。0歳児はまず泣くことで自分の意思を示します。6~8週目にはクーイングという現象が現れます。単音節のアー、ウー、クーなどの発声です。大事なのはその発声にイントネーションを伴うということです。嫌な時は「ウウン」と下がり調子となったり、尋ねるときは「ウウン?」と上がり調子になるのです。

 赤ちゃんは、自分が発声した直後にお母さんがおうむ返しに声を出してくれることがうれしいのです。母子の相互作用がコミュニケーションの核心にあることが分かります。

 1歳児は単語の音を模倣し、「マンマ」のような初語の発話もするようになります。1歳半頃には「マンマスキ」などの電文形式発話をするようになります。2歳児は「パパ何してるの?」のような疑問や「知らない」などの否定表現を身に付けます。

 3歳児になると基本的構造の文を発話することが可能になり、冗舌になります。4歳児は複雑な構造の文の内在化をし始め、5歳児で話しことばのほとんどの構文が使用できるようになります。

 児童期に本格的な読み書き能力の獲得があり、社会・文化的文脈で適切な文の発話をするようになり、論理的思考をするようになります。すなわち、10歳児くらいで母語の基礎的能力は完成します。母語の音韻体系と文法能力と社会言語能力を身に付けるのです。

 多くの児童が本年度から3年生の段階で外国語活動を、5年生の段階で英語を教科として学習し始めました。注意していただきたいのは、母語(第1言語)習得と外国語(第2言語)習得はプロセスが同じではないという事実です。年齢が早い段階で始めれば習得は容易であるような幻想は抱かない方が良さそうです。

 極端な論者は現在進行し始めた改革は革命だとまで言い切っています。それほど今までの英語教育と違った教育が可能でしょうか。ほとんどの学習者は日本語という母語の言語能力を有しているわけですから、その能力の上に新しい言語が堆積していくという視点が大事です。日英語を対照的に学ばざるをえません。

 さらに、決定的要因は英語という目標言語にさらされる時間の要素です。第1言語習得では四六時中目標言語にさらされているのに対して、第2言語習得ではごくわずかな時間しか目標言語に接していないのです。したがって、意識的な努力を伴った学習が核にならざるをえません。自分の意思で英語の学習を始め、学習の管理ができる自律した学習者になってください。言い換えると「学び方を身に付けること」です。



早稲田大名誉教授 神保尚武 富岡市七日市

 【略歴】前大学英語教育学会長。早稲田大商学部教授時代にNHKラジオ「基礎英語」講師。高崎高―国際基督教大卒。早稲田大大学院修士課程修了、博士課程中退。

2018/06/09掲載

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