合理的配慮について 個に応じ、生きやすく
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 最近、障害者福祉の分野で「合理的配慮」という言葉をよく耳にします。いったい、合理的配慮って何でしょう。

 障害のある人が日常生活や社会生活を営んでいこうとすると多くの困難に直面します。これらの困難をバリアー(障壁)と呼んでいます。駅の段差や階段などの物理的バリアー、情報を伝える際の情報のバリアー、福祉サービスを利用する際の制度のバリアー、そして人々の心の中にある差別や偏見などの心理的バリアーなどがあるといわれています。

 これらのバリアーを少なくしたり、なくしていくことを合理的配慮と言います。2016年4月施行の障害者差別解消法は、障害を理由とする差別の禁止と、さまざまなバリアー(法律では「社会的障壁」と言います)をなくしていくことを目的としています。

 車椅子にのる身体障害者の方が、2階に上がることが困難であれば、階段がバリアーになっていると考えられます。エレベーターを設置することにより、このようなバリアーをなくしていくことが合理的配慮です。

 知的障害や発達障害のある方々の合理的配慮とは何でしょうか? 身体障害者の方々の場合と少し異なる面があるかもしれません。例えば、知的障害者の場合、ゆっくりと短いことばや文章で、わかりやすく話しかける、漢字を少なくしてルビを振るなどとされています。

 発達障害者の場合、視覚的な伝え方の工夫をします。例えば、具体的に「○○をしましょう」といったシンプルな伝え方、その人の興味関心に沿った内容や図・イラストなどを使って説明するなどとされています。また、スモールステップ(手順を示す、モデルを見せる、体験練習をするなど)による情報伝達によって、障害のある人自身にとってわかりやすい方法を工夫することがポイントになります。

 知的遅れが無い発達障害の方々は、大学や大学院、専門学校などで学んでいます。発達障害の特性が、努力が足りない、我慢ができない、社会性がないなど誤解されやすいため、本人にそれらの原因を求められる場合が多くなります。学生が大学で学習や生活しやすい環境を教員たちがつくっていないことにはなかなか目がいきません。どうしても、障害者自身に原因が帰されてしまいます。しかし、障害者差別解消法の施行ととともに、大学においても、発達障害の学生への合理的配慮が少しずつ始まっています。

 それぞれの障害者の「合理的配慮」は、それぞれの障害者にとって異なっています。障害のある人それぞれに応じた合理的配慮がさまざまな場面で提供されると、障害のある方々が、もっともっと生きやすくなるでしょう。



上智大総合人間科学部社会福祉学科教授 大塚晃 高崎市八千代町

 【略歴】重度知的障害者施設指導員、厚生労働省専門官を経て現職(障害者福祉論担当)。主な研究テーマは発達障害者などの地域生活のためのシステムづくり。高崎市出身。

2018/06/12掲載

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