DV被害者の支援とは 人生担う覚悟で対等に
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 私が運営している法人の事業の一つにDV被害者支援がある。この仕事はただ相談に乗るだけではない。依頼されれば、いつでもどこでも出向き、被害者をシェルターに入ってもらい安全を確保する。心身を休め自分の持っている力を回復してもらう。

 そして次の段階、被害者の意志に沿って生活再建の支援活動が続く。住居を探し、暮らせるように社会保障から経済的支援、就労支援、その間の身体的、心理的にサポートをしてやっと、やっと自立にたどり着く。支援していくと自立の困難さは単に個人の能力や個人の問題によるものだけではないことを思い知る。

 自立してもその後も生活がうまくいっているか、困っていることはないか、度々の訪問はかかせない。被害者がこれでよかったと思ってくれなければ意味がない。被害者の人生全てを担う覚悟でなければ、この仕事はできない。

 私はこの仕事を前橋市にある認定非営利活動法人ひこばえの茂木直子氏、桐生市にある特定非営利活動法人いぶきの皆川陽子氏から教えていただいた。お二人の仕事、お二人の思いを参考にして活動している。お二人はこの仕事を10年以上も続けており、改めてお二人に敬意を表したい。

 DV被害者のある方の話。年齢は60代半ば、他県から逃げ、沼田市の親族に身を寄せたがうまくいかず、警察の依頼で私が支援することになった。ここまでにくるのに、さまざまなイヤなこと、つらいことあったはず。自立できるまでの長い期間もよく耐えてくれた。この方の生い立ちを聞けば、その頑張りがわかる。

 住まいもやっとみつかり、パートの仕事がみつかった。これで一安心。私は本人希望の座布団を持って就職祝いに伺う。その後も時々訪問している。部屋はいつも清潔に保たれ、生活用品が少しずつ増えていく。生活が落ち着いてきたのだろう。

 そんな時1本の電話。「尾崎さん、夫が亡くなりました」。DV加害者が亡くなった。これでもう逃げずに済む、安心して暮らせると思ったのは私だけ。彼女から「夫の墓参りに行きたい」との言葉。「好きだった人だから一区切りをつけたい」と言う。私はDV被害者と加害者という関係しか知らないが、あの方には私の知らない人生がある。そこも大切にしなければいけない。

 被害者と支援者、私はこの関係性に常に気をつけている。いつも対等でなければいけない。そうしなければ、支援者が加害者になってしまう。支援者も被害者から教えてもらうことがある。私は彼女を支援しながら、彼女の日々の言動から生き方の品を教えてもらったような気がする。支援活動しながら私も少しよい人間になれそう。



NPO法人結いの家理事長 尾崎多美子 沼田市坊新田町

 【略歴】2016年に結いの家を立ち上げ、DV被害者支援事業や貧困問題解決に取り組む。高崎市出身。県外で生活後、12年から沼田市在住。明星大人文学部卒。

2018/06/13掲載

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