和式トイレと外国籍児 成功体験へ知恵結集
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 5、6月は修学旅行の季節。新学期の慌ただしさも落ち着き、クラスの特色も出てきた頃である。学校や学年によって行き先はさまざまでも、子どもたちにとって大きな楽しみの一つであることは間違いない。

 私が勤務していた学校では、1年生から4年生までは日帰り旅行、5、6年生は1泊2日のカリキュラムが組まれていた。クラスでは、旅行の目的や交通ルール、持ち物や集合時間など普段の学習では体験できないことに注意しながら、わかりやすく事前学習をしている。

 日本語学級でもクラスと同時に、母語を交えながら丁寧に学習する。中でも和式トイレ学習には驚かされた。今でこそ日本の子どもたちも和式トイレに慣れていないという事例もあるが、以前は、和式トイレの経験がないという児童は少なかった。だから和式トイレの学習が必要とは考えもしなかった。しかし外国籍児童は和式の経験は無いに等しい。

 幼稚園や保育園に通っていない児童もいるため、社会体験が少ない。和式トイレ学習は必須の事前学習となった。座り方や立ち位置を学校のトイレを使って一人一人がデモンストレーションする。この体験こそが本番での失敗を回避し、「旅行は楽しかったね」という成功体験につながっていく。

 1泊旅行では、入浴が一大事である。集団で入ることや決められた時間内に行動することにもストレスを感じている。外国籍児童だけでなく大人でも同様なことが言えるだろう。シャワーの使い方や、湯船の入り方など細かなことを伝え確認していく。

 お風呂文化に慣れていないと、どうしてそのような行動を取るのか理解しがたいことがたくさんあり混乱が生じる。誰もが気持ちよく入るための配慮であることを丁寧に説明することは、外国人だけでなく、私たち自身も日本の生活文化の素晴らしさに気づく機会となっている。

 ハッとすることは他の場面でも起こりうる。例えば、体操着や水着など初めて使うものの名前書き。書き方や文字の大きさなど母語での説明書きが事前に保護者に配布されている。それでもある家庭ではマイネームではなく、サンプルに書かれたネームを書いてしまっていた。生活経験の違いか情報量が少ないのか、どんな情報を伝えていけば的確だったのだろうか。発信の工夫や紛らわしい表現の削り方を学んだケースであった。

 何でこんなトラブルがと嘆く前に、文化的背景が違うことを押さえて、日本での成功体験が積み重なるような仕掛けを作っていくことが必要であると思う。一つの仕掛けが功を奏さなくても、次の仕掛けを考える。互いの知恵の結集が、生活しやすい環境を生み出しているように思われる。



大泉町教委外国人子女教育コーディネーター 山田恵美子 埼玉県深谷市

 【略歴】大泉町指導主事の時、全国に先駆け外国人児童生徒の不就学の実態をまとめる。元大泉東・西小校長。2015年から現職。高崎女子高―大東文化大文学部卒。

2018/06/25掲載

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