東国文化事業 研究機関作り発信を
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 現在、群馬県では「東国文化事業」が進められている。県内にある古墳などの歴史遺産の価値をあらためて理解・評価し、地域愛を高めようとする取り組みである。箱物づくりや横文字文化に流れることなく、この土地の風土に根差した歴史資産に光を当てる、すぐれた文化行政施策だと評価できる。

 「東国文化副読本」が県内中学校に配布され、学校教育を通じて古代上毛野の歴史の深さが伝えられている。地域の首長が集う「古代東国文化サミット」が毎年県内の史跡公園で行われ、多くの人が集っている。ボランティアの県民古墳調査が実施され、その成果が一書にまとめられた。上野三碑の「世界の記憶」登録と周知活動についても、東国文化事業の一環として進められている。ここ5、6年で、県民の間に本県の古代史への理解が急速に育まれたことは間違いないだろう。

 今後この事業はどのような展開を目指すべきだろうか。方向は二つあると思う。

 一つは、地道に歴史遺産の価値づけを高め、資産化を図ることである。原石は磨かなければ宝石とならないように、歴史遺産もまた「研究と周知」というプロセスを経て輝くのである。この時、既知の遺産の価値をさらに磨くとともに、新たな世界的素材を見いだすことが必要である。その候補として、渋川市の黒井峯遺跡や金井東裏遺跡といった火山灰にパックされた古墳時代の遺跡群が挙げられるだろう。ベズビオ火山の噴火に埋没したイタリアのポンペイ(世界遺産)がライバルといえようか。

 二つ目は、本県の歴史資産を地域ブランドとしてもっと外部に売り出していくことだ。その活動のモデルは島根県である。日本で人口が2番目に少ない島根県の危機感は相当に高い。そこで「古代出雲」を地域ブランドに定め、知事がトップセールスを展開しているのである。島根県古代文化センターを設立して、研究職を毎年採用。彼らと全国の研究者による共同研究を行わせる。その結果を古代出雲歴史博物館で特別展として県民に還元し、内外にアピールする。これを十年来継続しているのである。

 また、古代文化や神話で著名な宮崎・奈良・和歌山・三重との5県合同で「古代歴史文化賞」を創設。わが国で出版された考古学・古代史・古代文学・神話学・言語学分野の良質な一般向け図書を毎年表彰するとともに、関連シンポジウムを加盟各県と東京で実施するというイベントを展開している。

 古代群馬の歴史遺産の輝きも、出雲に負けずとも劣らないものだ。東国文化事業の次の展開は、学術的機関を設立して重厚な価値づけを積み重ね、それを礎として、県行政を挙げて「毛野」のブランドをより強く全国に発信することではないだろうか。



明治大准教授 若狭徹 高崎市貝沢町

 【略歴】前高崎市教委文化財保護課長。2017年4月から現職。古代歴史文化賞、浜田青陵賞を受賞。著書に「前方後円墳と東国社会」。博士(史学)。高崎高―明治大卒。

2018/06/30掲載

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