挑戦する意味 知らない自分見つける
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 私が芸能関係に携わるきっかけとなったのが、実は上毛新聞だった。今から20年ちょっと前だったろうか、紙面のはじっこに「キャスト募集」と小さく載っていた。都内の大手劇団が、神風特攻隊の映画を製作するため、出演者を募集する広告だった。何か面白そうだな~と、友人と2人で履歴書を送ってみた。その結果、友人は1次の書類選考で漏れてしまい、私だけが後日、都内までオーディションを受けに行くことになった。

 ここからが大変で、今まで芸能なんて別世界のこと、もちろん演技レッスンなんて受けたことはない。慌てて、当時群馬テレビに勤めていた知人にアドバイスをもらった。そのアドバイスの内容は「とにかく自分のカラー・個性を主張してこい!」。もうこうなったら開き直り、思い切り自己主張してこようと、都内の指定された会場へ向かった。

 番号順に椅子に座り、1人ずつ部屋の中へ。そこには劇団代表・監督・音楽・朗読・演技等の各専門の先生がいて、その場で課題を与えられ実施する。最初は劇団代表と監督さんと質疑応答。志望動機や今後の希望等を聞かれる。

 次は朗読で標準語の文章を正確に読むこと。ここで面白いことを言われた。「群馬県は訛(なま)りがないのですか」と。もちろんそんなことはない。群馬弁は私だって話す。ただ言われた通りに標準語の文面を自分なりに正確にしゃべっただけ。

 音楽では先生が楽器で出した音をアーとかウーと音程を正確に発声する。意外にも音程が良く取れて、急きょその場で歌わされた。カラオケはたまに歌うけど、お酒も飲まず、知らない人だらけで曲も流れない! もうヤケだ!。自衛隊勤務でお世話になった12対戦車隊の歌を大声で熱唱した。

 最後の演技テストでは、「良い香りのする花を植えて下さい」と言われ、素直に演じる。上手だね~と褒めていただいたのだが、「私は植木屋です」と答えたら大笑いされた。こんな感じで私の初体験は終了。結果は…なんと合格! 驚いた。何が良かったのだろうか。

 今になって思うと、初めてのオーディションだったが、迷わず飾らず堂々と表現できたのが良かったのだろう。自分では気が付かなかった意外な点が分かって楽しかった。最初は興味半分、面白半分だったが、いざ挑戦! 相手の要求に自分の答え、考えをぶつければ良い。それがお互い一致すれば良い結果は得られる。たとえ残念な結果であっても新たな自分を発見できたら楽しい。

 思い切って「自分」を一歩前に出して、楽しみながらいろいろなことに挑戦してみてほしい。



軍事監修指導、俳優 金子昌弘 渋川市金井

 【略歴】元陸上自衛官。盆栽店の傍ら映画「野火」「シン・ゴジラ」、ドラマ「新・十津川警部 伊香保温泉殺人事件」などに関わる。前橋市出身。勢多農林高卒。

2018/07/13掲載

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