未来の病気減らすため 便利の陰に危険ないか
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 地球が汚れると人間の病気が増える。病気の原因は遺伝要因よりも環境要因の方が大きい。がんでさえ、遺伝要因が関与している可能性はおよそ5%以下とされている。では、どのような環境要因が病気の発症に関連しているだろうか。

 1970年代、透析液にアルミニウム入りを使用した透析患者では、アルミニウムが入っていない透析液を使用した場合に比べて認知症発症率が高いと言う研究結果が出て、アルミニウムの摂取と認知症の因果関係が証明された。その後、世界各国では、水道水のアルミニウム汚染を防ぐ取り組みがなされてきた。また、古くは公害で有名となったが、熊本県水俣市で工業廃水の有機水銀と中枢神経系の障害との関連、富山県で工業廃水のカドミウムと神経痛との関連が証明された。その後、全国で工場廃水の処理工程が、改善された。

 このような極端な例は、疫学研究によって証明されるが、汚染が軽微の場合の多くは、病気の発症との因果関係を証明することは難しい。なぜならば、病気の発症には長期間を有し、複数要因が関連しているため、長期追跡研究には、莫大(ばくだい)な人的および経済的コストを要するからだ。因果関係が証明された頃には、対策するには遅すぎると言うことも十分考えられる。

 現在、日々の生産活動が、目に見えない公害をいまだ作り出していることはないだろうか。昨今、プラスチックごみが問題となっている。およそ世界で年間800万トンのプラスチック容器がごみとなって埋め立てられ、それらがマイクロプラスチックという微小なごみとなって海に溶ける。5ミリ以下の粒子となるという。この粒子を魚が食べ、魚を人間が食べ、体内に蓄積されることになる。そんな中、欧州委員会では、30年までに包装に使うプラスチックを全て再生利用可能なものに替える方針を公表した。すでにヨーロッパのフード店ではストローが紙製に変わっているそうだ。

 プラスチックは、人体内のホルモンと非常に構造式が似ているため、内分泌かく乱物質として「環境ホルモン」とも呼ばれる。プラスチックの成分であるビスフェノールAやノニルフェノールはある種の野生生物の生殖系に影響を与えていることが分かっている。動物に影響があれば、当然、人間の生殖系にも影響を与えているだろう。私たちは、人類が開発した便利な化学物質が、健康へ与える影響を考えるべきである。後に、研究によって因果関係が証明されてから、取り組むのでは遅い。そして、われわれ医療者は、研究結果を待つ前に、未知の化学物質の人体への影響に取り組む必要がある。その方法は、既存の医療とは全く違ったパラダイムの医療によって見えてくると私は考えている。



総合医 関根沙耶花 太田市金山町

 【略歴】勤務医10年の後、前橋市で開業。2017年3月に太田市に移転。予防医学を軸に、「自立した健康」を目指す。前橋女子高卒、自治医科大地域医療学大学院修了。

2018/07/19掲載

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