大学生と掃除 学びと人材育成の場に
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 この頃、勤務先の大学で「掃除」と向き合っている。きっかけは、学内の一部を学生自身に掃除してもらう案が会議にはかられたことだ。そのエリアを利用するのは当該学科学生が4学年合わせて300人超。ほぼ毎日、決まった学生たちが利用するのだから、教育の意味もこめて、学生に清掃を任せてはどうかという話になった。

 しかし、中学・高校と違い、大学での学生の行動はまちまち。学内の清掃はほどんど業者に依頼しているため、学生の清掃意識も低い。そんな中、この人数で公平に分担し、継続的に掃除を行うためには、一体どのように進めたらよいのだろう。

 私は友人に助けを求めた。友人は、掃除の実施指導と研修を通じて、理論に基づく経営と自立した人材育成の推進を手伝う仕事をしている。

 友人のアドバイスはこうだ。まずミッションには、ゴールを設定する。これには正解がないから、自由に決めてよい。

 次に掃除に費やす時間を先に決め、その中でできることをやるのがいいという。キリのよいところまでやりたくなった場合でも、最初に決めた時間で終了する。長く拘束されないので学生もあまり不満に思わずに続けられるし、時間を守るという教育効果も見込める。

 最後に教員側にも準備が必要だという。限られた時間なので、最初にできるだけ具体的に指示をする。そして、時間配分や掃除以外の仕掛け、人を巻き込む技術が随所に必要となってくる。単に当番を決めるだけでは、嫌々掃除をする、何となく見ているだけの学生も出てくるからだ。

 「ゴールはこの程度が妥当だろう」ではなく、「どうしたいのか」「どうなってほしいのか」と理想を織り込んでゴールを設定し、それに対する準備をし、継続しやすい仕組みをつくる。こうした取り組み方は掃除以外にも応用できる場面が多い。なるほど、友人のアドバイスに納得した。

 大学は、学術研究とともに人材育成が使命だ。学内のキレイの基準は、学生にとってのキレイの基準になる。学生たちには、自ら気づき、行動できる人になってほしい。

 今、掃除の対象エリアを体育施設に設定して、私は授業と課外活動の場で学生と向き合っている。掃除用具の数と掃除箇所、公平に分担するための人数配分を事前に調査・計画し、彼らが短時間に集中できる状況をつくる。

 成果はきちんと評価し、できたときは心から喜ぶ。うれしい、楽しい気持ちは継続につながる。予想をはるかにこえて真剣に、率先して行動する学生たち。掃除は単に場所をキレイにするだけのことではない。それを実感している。



日本山岳会群馬支部会員 大家千枝子 高崎市芝塚町

 【略歴】高崎健康福祉大准教授。専門は体育・スポーツ学。1990、91の両年に世界選手権自転車競技大会出場。東京都出身。日体大卒、日体大大学院修士課程修了。

2018/07/22掲載

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