山の手入れと豪雨被害 個の行動が解決の糸口
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 「平成30年7月豪雨」で多くの方が亡くなられ、今もなお被災され不自由な生活を余儀なくされている方が多数いらっしゃる。亡くなられた方のご冥福をお祈り申し上げるとともに、被災された皆さまに心よりお見舞い申し上げる。

 この豪雨は100年に一度という災害だけに、すべてのリスクを予見することは難しい。しかし、豪雨によって川が氾濫し、多くの家屋が床上浸水する状況をみると、自然は人知を超える存在であることを改めて思い知らされる。特にこの豪雨を含めた、最近の台風等では、土砂崩れによる被害が多いように感じる。原因の一つと推定されるのが、山の手入れ不足である。

 日本の国土の7割弱は森林である。これは世界的にみても非常に高い値である。にもかかわらず、日本の木材自給率は35%(2016年度)と非常に低い値となっている。つまり、日本では自国にある森林資源をあまり利用せず、他国の森林を伐採することで得る輸入木材に頼っているのである。木材の内外価格差に起因する部分もあるが、使われないから国産材の流通が少なく、購入できないので外材を利用するといった悪いスパイラルによる部分が多い。

 このように国産材が利用されないものだから、人工林として存在する森林は整備されず、山は荒れるに任せて放置されることになる。自然林の場合には、それ自身の多様性によって、うまく均衡し豪雨等にも耐えられるが、人工林の場合には、針葉樹が多く、人間が手を入れなければ土壌侵食の危険性が高くなり、土砂崩れリスクが高くなる。

 このような社会的な課題を解決するためには、誰かが何かするのを待つのではなく、住宅価格が多少高くなったとしても、国産材を多用する工務店を住宅購入者自身が選択する等の行動が求められるのである。

 社会的な課題解決のための行動という意味で、富岡市および富岡商工会議所の姿勢は評価できる。

 今年3月に富岡市の「顔」である富岡市役所は新しくなった。著名な建築家である隈研吾氏によって木材を多く使った斬新な市庁舎が完成した。新しい庁舎では、市民が触れる部分はでき得る限り富岡市産の木材を使い、国産材も多用して建築されている。富岡商工会議所も今年7月に新商工会館が完成した。こちらも床材以外は国産材にこだわった造りになっており、木のぬくもりを感じさせる内装となっている。

 多くの市民が訪れる市庁舎や新商工会館が、誰もが憧れるほど素晴らしい木造建築物であることは、それだけで「木」の良さを広げる効果がある。これをもって、豪雨被害等をくい止められるわけではないが、このような行動は多くの自治体の模範となろう。



高崎商科大教授 前田拓生 高崎市旭町

 【略歴】2017年2月から高崎商科大地域連携センター長。早稲田大理工学研究所招聘(しょうへい)研究員。専門は金融論、ファイナンス論、地域政策デザイン。大阪市出身。

2018/07/30掲載

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