医療的ケア児を考える 共生へ保護者のケアも

 「医療的ケア児」とは、常時、医療的なケアが必要な子どもたちのことです。たんの吸引、胃ろうによる栄養の注入、人工呼吸器の装着など日常的に医療が必要な子どものことを呼んでいます。

 医療的ケアを必要とする子どもは2015年現在、全国で約1万7000人で、増加傾向にあります。特別支援学校や通常の小中学校における医療的ケアが必要な児童生徒数も増加しています。このような、障害の重い子どもたちが地域で安心して教育を受けられ、生活していく共生社会が求められています。

 医療的ケア児は、医療技術の向上等を背景として新たに生まれた子どもたちです。それまでも、医療的ケアの必要な子どもたちは存在していました。今まで、医療的ケアの必要な障害児は「重症心身障害児」と呼ばれていました。寝たきりの状態を含め重度の身体障害と重度の知的障害を併せもつ子どもたちでした。

 近年、知的な遅れがなく、自分で歩くこともできるが、人工呼吸器を装着しているなどの子どもたちの存在が認識されるようになってきました。「医療的ケア児」という広い概念が必要になってきたといえます。人工呼吸器を着けて、走り回る子どもの存在は、新たな配慮されたケアの必要性を顕在化させました。

 17年の児童福祉法の改正により、地方公共団体は、日常生活を営むために医療を要する状態にある障害児が、その心身の状況に応じた適切な保健、医療、福祉その他の各関連分野の支援を受けられるよう、体制の整備に関し、必要な措置を講ずるように努めなければならないとされました。これにより、医療的ケア児も福祉サービスの対象となりました。

 医療的ケア児が生まれ退院すると、親御さん(特にお母さん)が24時間子どもにつきっきりにならざるを得ません。そのため、お母さんが仕事を辞めるということもあります。夜間も断続的にしか眠れないなど親御さんへの負担は相当大きなものがあります。保育所や児童発達支援センターなどでの医療的ケア児受け入れも始まったばかりです。まだまだ、家に閉じこもりがちになる状況です。

 特別支援学校を中心に学校での医療的ケア児の受け入れも始まっていますが、全国的には家族の付き添いを必要とする例が多いといわれています。学校に看護師さんを配置し、先生たちが医療的ケアの知識や技術を学んで対応する学校も増えてきました。

 今年4月からの障害分野の報酬改定においては、医療的ケア児を支援する児童発達支援事業所などに看護師を配置しやすくするなどの措置がとられました。重い障害の子どもたちが地域で安心して生活していくためには、訪問看護を含め、多くの看護師さんに仕事がしていただける環境をつくることは、とても重要なことです。



上智大総合人間科学部社会福祉学科教授 大塚晃 高崎市八千代町

 【略歴】重度知的障害者施設指導員、厚生労働省専門官を経て現職(障害者福祉論担当)。主な研究テーマは発達障害者などの地域生活のためのシステムづくり。高崎市出身。

2018/08/01掲載

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