子ども電話相談 「常識」の違いを知ろう
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 毎年夏休みシーズンになると楽しみにしているラジオがあります。全国の子どもたちの疑問に自然科学や化学のさまざまな分野の専門家が答えてくれるという、朝の人気番組です。身の回りの生きものに対して、大人では思いつかないような素朴な質問を持つ子どもたちの話を聞いていると、大人と子どもでは同じ世界にいても違うものを見ているんだな、と自身の子ども時代の気分を懐かしく振り返ったりします。

 そこで思い出すのが、生物学の分野にある「環世界」という言葉です。周りの環境を認識する知覚や感覚が違うので、同じ時間と空間を共有していてもそれぞれの生きものは違う世界を生きている、というような概念です。

 例えば、人間は視覚情報に多くを頼って生活していますが、人間には見えない紫外線が見える昆虫や、人間の数十万倍も優れた嗅覚や聴覚を持つ犬などは、同じ空間にいても私たちとは全く違うものとしてこの環境を認識しているといいます。

 私は、群馬への移住促進や、外国人観光客の受け入れなど、いわゆる異文化の交わる分野に関わる機会が多いのですが、人間同士のコミュニケーションでも環世界の概念を持つとスムーズに事が進むことがあると感じています。

 都市部で生まれ育った人と自然が身近な場所で生まれ育った人。新聞やテレビの情報をよく見ている世代の人と、インターネットを主な情報源にしている人。日本語の情報しか検索できない人と英語の情報しか検索できない人など。それぞれ、もともと持っている知識や情報が違うので、世界の認識の仕方が全く違う可能性があります。そのため、相手に響くアプローチの仕方も違います。

 日本は民族的な多様性が比較的少ない国で、さらに東京に比べて地方は人の出入りも少ないので、自分の常識が世界の常識のように感じがちです。しかし、技術の進歩などで短期間に世の中が変わったり、社会の流動性が増した現代では、自分の常識だけでは対応できなかったり、良いと思ってやった取り組みが全く検討はずれだったりする場面が増えていると思います。

 精神的にも「なんでこの人は常識が分からないんだろう」ではなく、「どんな環世界を持っている人なのかな」と考えると、イライラが収まることもあります。

 相手の気持ちを思いやるという意味だけではなく、異文化と関わる取り組みでは、どうすれば自分と違う常識を持つ相手に響くのか、他者の文化を知ろうと努力し、観察することで、より効果的で具体的な戦略が組み立てられると思います。これからの群馬をつくる若い人には、多様化する世界で生き抜く力を身に付けるため、この夏休みにいろいろな体験をしてもらえたらいいなと思います。



元片品村地域おこし協力隊 本間優美 みなかみ町政所

 【略歴】大手通信会社を経て2014年12月に片品村へ。皮の利活用などに取り組み、協力隊退任後は沼田市で会社員。第1種狩猟免許所持。東京都出身。国際基督教大卒。

2018/08/07掲載

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