広瀬川とまちづくり(3) 地域と生きるハコモノ

 私は現在ハコモノと呼ばれる公共施設の運用管理を主な研究対象としているが、近年社会問題となっている人口減少や少子化・高齢化の中で、あらためてハコモノへの関心や期待が社会全体で高まっているように感じる。しかし残念ながら、ハコモノだけで解決できることは少ない。

 広瀬川河畔を例にとると、美術館や文学館、駐車場や公衆トイレなどのハコモノに加え、両岸の緑道や大小の橋、商店街や道路、さらに緑道に設置された多くの詩碑や樹木など、インフラの面的整備が実施されている。それらとほぼ並行して整備されている上下水道や電気・ガスなどとの関係性を考慮すれば、平面整備というよりも立体整備と呼んでも良いかもしれない。

 この複雑かつ複合的な関係性を踏まえつつ、そこにいるさまざまな思いを持つ住民や利用者が何を公共サービスに求めているのか整理できて、はじめてハコモノの適切な整備を検討する入り口に立つ。ハコモノだけで課題を解決しようとして失敗した事例が全国にどれだけ多く存在しているか、ご存じの方も多いだろう。

 そのためハコモノ単体の整備であっても、従来の所属や専門にとらわれることなく幅広い視野からの検討が必要であり、一人や一部署で検討できることの範囲を超える場合が多い。だからこそ産官学や住民との連携が不可欠であり、手間や時間がかかるからといって連携を躊躇(ちゅうちょ)するのは本末転倒である。また老若男女どのような立場の方であっても、どこかの住民であるからには人ごとではない。

 そしてもう一つ重要な点は、規模や形態に違いはあるものの大多数のハコモノはほぼ全ての都市に存在するが、立地や環境が異なるためハコモノの関係性に同じものは一つとしてないことである。つまりハコモノの関係性は都市の独自性や地域性であると見なせる。単に他都市の成功事例を持ち込んでもうまくいかない理由がここにある。

 ハコモノは自治体職員のものではなく、住民のものである。そして当たり前ではあるが、ハコモノは公共サービスを展開する拠点に過ぎない。この仕組みは実は民間の株式会社とほぼ同じであり、株式会社が株主の利益を確保するために経営を行うように、自治体は住民への公共サービスを確保するためにハコモノを運用することが求められる。

 そのため自治体が財政状況が厳しい中で公共サービスの向上を目指すのであれば、新たなハコモノを提供する前にインフラを含めた地域全体で有効活用されていない社会資源を再度見直すこと、そして住民とともにハコモノだけに頼らない新しい公共サービスの姿を検討すべきである。

 広瀬川に眠っている社会資源は何であろうか。この答えは私よりも住民の皆さんの方が良くご存じだろう。



前橋工科大准教授 堤洋樹 高崎市栄町

 【略歴】九州共立大准教授を経て2011年から現職。建物の長寿命化をソフト、ハード両面から研究している。前橋市などの空き家対策支援に携わる。福岡県出身。

2018/08/10掲載

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