夏休みの少年少女 愛と共に思い出つくる 詩人、井上出版企画代表 井上優
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 夏休みの思い出を話そう。膨大な熱量と生命力を持つのが夏という季節だ。私は激しく“夏”に憧れる。夏の思い出と共に。

 夏休みといえば思い出すのは、小3に父と作った木造の舟だ。19788年くらいだったろうか? 子ども2人が乗れる設計だった。命名はユウが作ったユウボート。前橋の敷島公園の池で進水式をした。その日は日曜日とあって、たくさんの人々が見守っていた。しかしてユウボートはドイツのUボートよろしく、潜水してしまい帰って来なかった。命名とは、恐ろしいものである。

 この夏休みに息子のシオンは、愛犬ラズベリーに2階建ての犬小屋を作りたいという。妻の実家は藤岡にある。藤岡のばーちゃん、つまり妻の母は犬が大の苦手だ。幼い頃に大きな犬に追いかけられたトラウマが今も癒えないようだ。シオンは藤岡の家でもラズベリーと一緒にいたいので、2階建ての犬小屋を考えたらしい。

 もう一つ夏休みの思い出がある。これは大人になってからの思い出だ。

 私は一時期カトリック教会の司祭館に住んで神父さんの手伝いをしていたことがある。目的は主に不良少年の更生だった。少年らは、少年院に入るか、司祭館に入るか自分で選択してやってくる。

 ユウスケという名前の小学校3年生の男の子が、両親に連れられて来た。なんでも、ユウスケは親のお金を盗んでここへ来たらしい。僕とユウスケは同じ部屋に寝起きすることになった。

 ユウスケは細かい気遣いができる優しい子だった。それは、家庭内で激しくイジメられた証しでもあった。僕は見抜いた。実母のいない寂しさと継母の苛烈なイジメから、自分の心の逃げ場を求めて盗みを働いていたのだと。

 大人が夏休みの子どもたちに伝えられるものは何だろう? 僕には“愛情”しか思い浮かばない。愛情は心豊かな“場”をつくる。“夏という場”。

 最後に拙書『季節の手のひら』の冒頭の詩を少し短縮してご紹介したい。

 明日が始まるとき
夕焼けで/街が絵本に色づく頃/オレンジ色の雲は/早足で仕事をしていて/明日を果実にしようと/忙しい日給七千円で/ワーキング・プアーをやっている僕は/手に夕日で熟れた金貨はないけれど/ふと/夕焼けが運んできた/絵本を/手にする/そして「遠くまで行くんだ」と/君につぶやく/*/星空がやって来て/やがて宇宙が/呼吸をはじめ/やっとそこで/本当の呼吸が始まる/決して凍らない涙/自分の涙のために舌の剣で/屈辱を組織するのではなく/明日のために出来ることを探そう(愛を組織しなければならない)/*/
『あの頃は 僕らが夏だった』そう言える日々のために



井上優(いのうえゆう) みなかみ町上牧

 【略歴】本名・井上雄。日本現代詩人会員、日本児童文学者協会員、日本ペンクラブ会員。前橋市出身。英バイアム・ショウ美術大ファウンデーションコース卒。

2018/08/14掲載

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