モノづくりの初心 責任と覚悟と熱い思い
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 機械部品を造る町工場の社長さんと食事をする機会がありました。機械部品の製造に関して、私は憧れや尊敬を抱いていました。自分の造った部品が車や工業製品に組み込まれ、日本だけでなく世界中に広く広がっていくということにです。ですが、実際の内容を聞いて衝撃を受けたのです。

 自分が出荷しているものと町工場で造られる機械部品に対しての思い入れは同じようではないかと感じ話をしていましたが、一つ一つの部品に対しての責任感が私とは比較にならないほどのものであることを知り、ショックを受けました。

 私はキュウリを栽培し、JAを通し市場へ出荷しています。人が食べるものを作っているため、自分なりに責任感を持って栽培をしています。農薬の使用量をできるだけ少なくできるように天敵昆虫を使用したり、キュウリが素直に成長できるようにビニールハウスの中の温度管理を1度刻みで調節したり、みずみずしいキュウリが収穫できるように小まめな水管理をしたりするなど努力をしています。

 出荷の箱に生産者番号が記載されているため、販売先や消費者が購入した野菜について知りたい場合、JAに問い合わせをすると、栽培に使用した肥料や農薬などの情報を得ることができます。しかし、出荷した野菜に対して、生産者が消費者の反応を知ることはありません。

 工業製品の中に組み込まれている一つ一つの部品はその多くが1軒の町工場のみで製造されています。それは、もし不具合が出た場合に責任の所在を明確にするためだそうです。製造する側は部品に対して精度や強度などのさまざまな検査をします。もし納品先からその部品の問い合わせがあった場合に備え、検査データをいつでも確認できるよう長年にわたり、自分で全て管理保管するのです。製造した部品に不具合が出たため、廃業した知り合いがいると話してくれました。さらに部品を造る機械の金額を聞き、あまりにも高額で驚きました。

 会話をしていてあまりにも大変な仕事だと思い、なぜ今の仕事を続けているのかを尋ねたところ、「リスクは大きいけど、自分の造った部品が製品の中に組み込まれ、それが世界中に出回り、その部品は世界で自分しか造っていないってことに尽きるかな」と、ちょっと照れくさそうに話してくれました。社長さんはごつく黒い手をしていましたが、なんだかとてもかっこ良く見えました。帰り道、久しぶりに胸の中から熱いものが込み上げてきました。

 話を聞いて厳しい現実と仕事に対しての熱い思いを教えてもらいました。私も不安と覚悟を持って今の仕事を始めたことを思い出し、改められた気持ちです。明日からまた恥じないモノづくりを頑張ろうと思う限りです。



野菜栽培農家 町田睦美 玉村町南玉

 【略歴】衣料品メーカーの高崎、前橋、軽井沢の店舗に計8年勤務後、就農。キュウリを中心に栽培。「玉村漬物部」や「たまむら食の探検隊」を立ち上げる。帝京大卒。

2018/08/20掲載

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