エピテーゼ技術者育成 「身近さ」の理想へ前進

 エピテーゼ製作ラボを開設して3年後の2014年、エピテーゼ技術者育成のための「Medical Lab K Epithese Training School」(以下スクール)を開講し、今年で5年目となりました。スクールを始めようと思ったきっかけはお体の一部を失い悩まれている方々、一人でも多くの患者さんにエピテーゼを届けたいという思いがあったからです。

 当時、エピテーゼの製作方法を教えている所はほとんどなく「エピテーゼが欲しい」という需要とは反対に技術者の数も多くはありませんでした。とくに地方では技術者はおろかエピテーゼ自体の認知度も低いため欠損で悩まれている方々に情報が行き届くわけがないのです。

 そんな状況の中、「技術者がいなくエピテーゼの認知度が低いのなら自分で教え、生徒さんたちに発信してもらえばよいのではないか。自分一人で技術を抱えてしまうのではなくインプットしたことはアウトプットするべきなのでは」と考えたのです。

 各都道府県に2~3人の技術者がいれば欠損で悩んでいる方々がどれだけ救われることでしょう。今まで都市部にエピテーゼを作りに行っていた方々も、新幹線を乗り継いで泊まりがけで製作に時間を費やしていた方々も、地元で作ることができれば、仕事の合間や子どもが学校にいる合間などを使い、エピテーゼを容易に手にすることが可能となるのではと思いました。

 エピテーゼ利用者と製作技術者の相性もあります。センシティブな部分だからこそ女性技術者に作ってもらいたいが、実際作りに行ったら男性技術者しかいなく、コミュニケーションがうまく取れずに自分の思いが伝えられないまま完成となってしまったという例もあるようです。

 求める方がいる以上、その要望に応えたいと5年間で男女合わせて延べ40人ほどのエピテーゼ製作技術者を育てました。全ての生徒さんが第一線でエピテーゼを製作しているわけではありません。クオリティーの高いエピテーゼを製作するために日々練習に励む方、家庭や育児と両立しながら仕事として確立しようとする方などさまざまです。卒業生には北海道や青森、福岡や山口県など遠方の方も多くいます。学ぶということは大変なことですが、私の理念や思想を実践に移してくれる仲間が全国に増えたことは事実です。

 そして何よりもうれしいのがエピテーゼの製作依頼をしてくださる方から「エピテーゼはテレビの中だけで身近に作ってくれる人がいるとは思わなかった。失った体を取り戻すことができてうれしい」と耳にすることが多くなったことです。

 理想としていたことを現実化することができた5年間でした。



歯科技工士 萩原圭子 高崎市片岡町

 【略歴】歯科技工士の傍らエピテーゼの技術を学び、2011年に萩原歯研・エピテーゼ製作室メディカルラボKを開設。製作技術者の育成にも取り組む。高崎市出身。

2018/08/22掲載

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