手当て 触れることで認め合う

 私の所属する法人プライマリーの運営しているデイサービス モン・クールが取り組む認知症緩和ケアについてご紹介したいと思います。

 モン・クールのスタッフは日本スウェーデン福祉研究所が行うスウェーデンの認知症緩和ケア教育機関である財団法人シルヴィアホームの研修プログラムを受けました。

 シルヴィアホームは、スウェーデンのシルヴィア王妃がアルツハイマー型認知症になられた母親の介護を経験し、介護の重要性を痛感されたことがきっかけとなり1996年に設立された機関です。

 シルヴィアホームが提唱する認知症緩和ケアは①症状コントロール②チームワーク③家族支援④コミュニケーションと人間関係―の四つの柱から成ります。これらを中心とし、認知症の人とその家族の生活の質や生命の質の維持・向上を目指して身体的・精神的・社会的・生存的な側面から捉え支えるケアです。

 認知症緩和ケアの補完的手法としてタクティールケアがあります。タクティールとはラテン語のタクティリスに由来し、「触れる」という意味です。その言葉が示すように施術者の手で相手の背中や手足を柔らかく包み込むように触れることにより、さまざまな症状を和らげるとされています。

 肌と肌の触れ合いにより、認知症の人がご自身の生い立ちや昔話などいろいろなことを話し始めることがあります。こうした例に加え、がんの痛みや糖尿病の痺(しび)れのケアにも用いられ、スウェーデンでは医療や福祉の現場で、有効なツールとなっています。

 ケアを受けることで皮膚にある受容体が刺激され、知覚神経を介して脳の視床下部へ信号が送られオキシトシンというホルモンの分泌が促されると言われています。別名安静ホルモンとも呼ばれ、最近の研究で不安感やストレスの軽減に大きく関わっていることが明らかになっています。

 日本スウェーデン福祉研究所の中込敏寛代表によると、半世紀近く前にスウェーデンの看護師の体験から生まれました。未熟児を担当していた看護師は発育不全の原因を母親とのスキンシップ不足によるものではないかと考え、保育器の中に手を入れ、そっと触れることを毎日繰り返したそうです。すると不安定だった体温や血圧、脈拍などが安定し、体重も順調に増え始めたことから研究が始まったということです。

 日本にも手当てという言葉があるように、モン・クールのスタッフはこのケアをほぼ毎日行い、施術される利用者さんも施術するスタッフもお互いが触れることで認め合い、受け入れ合える関係性の構築に努力しています。

 また私たちプライマリーでは北関東では初となる地域中核研修センタ-としてタクティールケアの研修活動も担っています。



認知症トレーナー講師 柿沼博昭 桐生市相生町

 【略歴】母親の病気を契機に福祉業界へ転職。プライマリー(桐生市)の社員としてデイサービス立ち上げや認知症トレーナー育成に携わる。桐生南高卒。

2018/08/28掲載

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