コミュニケーション 違い楽しみ、響き合う
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 私が在籍していた日本航空の国際線では、通常外国人乗務員が数人乗務していたので、国際色豊かな現場環境だった。ヨーロッパ各国、アジア各国、ブラジル線が就航していた時には、半数近くがブラジル国籍の乗務員で飛ぶこともあった。グローバルな環境に「違い」を楽しむ一方で、「違い」故に起こる衝突やミスコミュニケーションも経験した。特に新人の頃は自分の価値基準を強いていたところが多々あったと反省する。

 その後、訓練部で外国人新人乗務員の教官を務めることになり、当たり前だが国によって学び方も受け止め方も違う訓練生に、指導する立場として、指導方法のバリエーションを持つ重要性を学ぶ機会を得ることになった。

 その中での経験を紹介すると、例えば勉強の仕方は、アジアは試験重視型、色とりどりにマーカーを使ってテキストを染めていく。この特徴は日本人と似ているところでもあった。一方で欧米は実践重視型、試験よりも実技という特徴が強かった。

 タイ人の新人を担当した時は講義中に質問がなく、理解しているのかどうかわかりづらい傾向があった。驚いたのは私が廊下を歩くと、皆私に向かって手を合わせながら壁際に寄り道を譲る。縦の人間関係を非常に重視する彼らの国民性の表れで、質問も失礼という意識があったようだ。

 質問はしないがしっかり勉強してくる彼らに、私もタイ語を学び、承認や励ましの言葉をタイ語で伝えるようにしたことで距離が縮まった。安全に関わることでは叱ることも必要だったが、プライドの高い国民性なので、叱る際は「陰でそっと」と配慮した。

 ヨーロッパ諸国の新人を担当した時は一つ一つ納得するまで質問攻めになるため、カリキュラムが時間通りに進まず、講義最終日には、ロンドンから飛行機にギリギリ飛び乗って帰国したこともあった。最後はテーブルを取り除き、いすだけで丸くなって講義をし、彼らが納得いくまで質疑応答に時間を割いた。

 現在さまざまな仕事の現場では外国人との協働が当たり前になっている。「言わなくてもわかるよね」は通じない。そのためには語学力は必要不可欠だ。また、コミュニケーションを取らず、黙って足りない箇所を補ってしまいがちなのが日本人の特徴でもあるが、それでは彼らは気づけないし成長もできない。

 会社にとって必要な「人財」として成長するためには、私たちが率先して言葉で伝えること、価値観、特徴を理解してもらうこと、同様に彼らの価値観、特徴も理解することが大事だ。土台は国対国ではなく、人対人、伝え、受け止めれば響き合うのがコミュニケーションである。そして何よりも「違い」を楽しむ心を持つことが一番大事だと私は思っている。



コミュニケーションデザイン代表 堀口瑞予 東京都千代田区

 【略歴】日本航空で客室乗務員や教官を約20年間務めた後、独立。明治大リバティーアカデミー講師。ワイン講師、接客コンサルタント。高崎女子高―明治大卒。

2018/08/29掲載

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