災害と図書館 資料のあり方考えよう

 7月の西日本豪雨では、各地でたくさんの図書館が被害を受けました。浸水や停電、断水、復旧作業などでいまだに開館ができない館もあります。岡山県倉敷市真備町は地域全体が甚大な被害を受け、図書館も浸水しました。蔵書約12万7000冊は全て水につかり、そのほかにも住民が借りていた本も当然のことながら被災しました。これらは全てを廃棄せざるを得ない状況だそうです。

 現在、市場に出回り、入手が比較的容易な図書に関しては買い替えることも可能です。しかし、どうしても廃棄のできない資料が図書館には多数あります。

 図書館の持つ大切な役割の一つに郷土資料の収集と保存があります。郷土資料とは地域に関連する資料、本や写真、地図、チラシ、古文書など、その地域の人々が生きた証しの記録です。場所によっては民具等の生活に密接に関係する物品も収集し、地域のことを多角的に学び、知ることもできます。

 その地域の図書館だけが所蔵している貴重な資料もあります。これらが被災し、修復が困難である場合、地域のことを知る手だてが失われてしまい、大きな痛手と言わざるを得ません。

 水にぬれてしまった本はページが貼り付いたり、泥や汚れが付着したりします。水分を多く含んだ本は重く、水分を抜くのは困難です。通常、48~72時間でカビが発生するので早急な処置が必要とされていますが、地域全体が被災していれば、まずは住民の生命や生活が最優先されるため、図書館員も災害復旧に割り当てられる場面も出ます。そのため、資料復旧のために人手やものを充てることは現在では難しい状況です。

 大規模な災害の場合には施設や設備も大きな損害をこうむっています。そのため、安全を優先し館内に入れないケースもあります。仮に被災した資料を運び出せたとしても修復する場所や修復道具、人手も必要となり、災害直後にこのような作業を行うことも困難な状況です。つまり、図書館の役割は失われ、多くの資料が災害によって失われたり、原形をとどめない可能性があります。

 各図書館は災害への備えや対処を平常時に検討していますが、当然のことながら、利用者や職員の生命を守ることに主眼が置かれています。災害発生時に多くの本を他地域に避難させ、どの資料から修復していくか優先順位をつけ、被災した大量の資料を効率よく修復していくことは、多額の費用や専門的知識、多くの人の手が求められます。

 対策は全国的に遅れているのが現状です。文書館や博物館といった資料を扱う機関との連携も不可欠ですがこちらも、進んでいるとは言えません。今後、全国の図書館界で考え、取り組んでいかなければならない大きな課題です。



草津町教委学校教育係長 中沢孝之 草津町草津

 【略歴】草津町役場に入り、町温泉図書館司書などを務める。全国組織の図書館問題研究会で活動。郷土史やハンセン病についても関心が深い。和光大人文学部卒。

2018/09/01掲載

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