若者支援事業 「親子に戻れる」ように
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 私の運営している法人の事業の一つに「若者支援事業」がある。設立当時は養護施設や自立支援センターの退所者のアフターケアを考えていたが、沼田市は児童養護施設もなく、対象者が見当たらない。どうするかを模索していた。そこで児童養護施設の退所者の支援活動をしているヤング・アシスト(前橋市)という団体と連携し若者支援の勉強をさせていただいた。

 支援を受けている若者のほとんどは、幼い頃に親からの虐待、ネグレクトで放り出され、児童養護施設で暮らしてきた。そして18歳になると、何の後ろ盾のない状態で社会に放り出される。心細さの中で自立を目指すがうまくいかずいろいろな問題を抱える。ヤング・アシストはそんな若者に対してさまざまな支援を行いながら自立させていく。現状を聞くと言葉では言い尽くせない大変さがある。

 養護施設退所者でなくとも、18歳以上の若者や、高校へ行かない10代後半の若者の実態は行政では十分に把握されていないのが現状。福祉の空白の年代と言われている。また、この年代はまだ子どもの力だけでは自立はなかなか厳しい。

 私の住む沼田市にだって、親の虐待やネグレクトはあるはず、家族の中で苦しんでいる若者はいるはず。もし問題を抱えた若者がヤング・アシストがしているような支援を受けられれば、誰かが寄り添ってくれれば、若者は若者の力で自立はできる。引きこもりや自死などの道を選ぶことなく、新しい道を選べる。

 ヤング・アシストの広報にこんな一文をみつけた。「自立とは、助けられながら生きること、そして誰かを助けながら生きること」と。これはとても大切なこと。みんなが忘れていること。自立は自己責任だけではない。若者たちはまず助けてほしいと言える力を身に付けねばならない。

 ここ2年で当法人にも数件、若者からSOSが入ってきている。その中の一人は最初私のところに来た時は、親との関係で悩んでいるだけで、自分のことがなかなかわからなかった。何カ月もかけて話し合い、自分が本当にやりたいことを見つけ、親と離れ自活する道を選んだ。そしてやっと自分が希望していた就職が決まり、今自立しつつある。

 長い時間がかかってきたが、その間私だけではなくいろいろな方の支援を受けてきたはず。そのことは本人が一番よく知っている。社会に出たら今度は本人が誰かを助けながら生きていくのだろう。でも、もしつまずいたらここに帰ってくればいい。少しの支援でまた社会に飛び立っていくだろう。

 自信を持って自立できたら、親のところへ行けばいい。そうしたら親への気持ちも変わってくるはず。昔のような親子に戻れるはず。それが、若者支援事業の最終目的なのかもしれない。



NPO法人結いの家理事長 尾崎多美子 沼田市坊新田町

 【略歴】2016年に結いの家を立ち上げ、DV被害者支援事業や貧困問題解決に取り組む。高崎市出身。県外で生活後、12年から沼田市在住。明星大人文学部卒。

2018/09/02掲載

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