自分を変える 殻を破り、もっと強く

 大学によって夏休みのスケジュールの立て方は大きく異なります。東洋大はさまざまな地域で合宿をしています。

 今年は国内だけでなく、米国オレゴン州のポートランドで合宿をしました。標高は高くありませんが、日本より湿度が低く過ごしやすい気候です。現地のナイキオレゴンプロジェクトで活躍する大迫傑選手とも会うことができました。異国の地で活躍するアスリートは自分の意思で海外で勝負すると決めた以上、覚悟が違います。誰かの右へ倣えではないため、プロランナーとして自分の目標、プロセスが明確で学生たちにとって影響力がとてもありました。

 同州で行われたフットコースト(HTC)という駅伝大会にも参加してきました。320キロを36区間、12人で繋(つな)いでいきます。日本の大会と異なりレースの環境は粗悪でタフさが求められますが、2000チームも出場するほど人気のレースです。先導車もいない道を迷わずに走らなければならなかったり、中継所への配車や回収も自分たちで行わなければならない駅伝です。

 選手たちは休憩中も車内でで過ごし、次の自分の区間に備えました。14時スタートでゴールは翌朝7時でした。結果は優勝することができましたが、17時間という長丁場でした。今回の経験が選手個人の殻を破るきっかけになれば良いと思います。チームの結束力も高まりました。一人では走れない環境でも、責任感とチームの雰囲気が後押ししました。雰囲気が変われば視点も変わりやすくなります。チーム作りが、人作りとなるようにまずはチームの雰囲気作りが夏合宿の大事な目標の一つです。強化のためには練習が主となりますが、最後は自分を変えたり、もっと自分を強くしないと頂上には行けません。

 東洋大の練習をしていれば自然と強くなるだろうと錯覚をしてしまうと、選手の成長はもちろん、チームも停滞してしまいます。大学4年間で自分をいかに変えられるか、成長できるかが競技力向上、そして就職にも大きく影響します。学生を見ていて、採用の内定を多くもらえる学生は業種に関係なく、採用側に好まれる共通点が多いです。「個人の殻を破り、柔軟性を持って物事を捉え、協調性を持って仲間と問題解決に向かう。そして自分を変えていけるかどうか」―。それにはまず自分という存在と真に向き合わなければなりません。

 人生のどこかで世間知らずのまま、自分だけの判断を信用して生きてきたことに気づかなければならない時があります。心ある人の支えの中でなんとか生かされてきたことに気づくことが社会人になる前に必要です。チームでも愚痴をこぼしたり、弱音を吐いたりすることが多いうちは幼い自分のことしか見えていない選手が多く、雰囲気作りができてるとはいえません。



東洋大陸上部男子長距離部門監督 酒井俊幸 埼玉県川越市

 【略歴】東洋大からコニカミノルタに進み、全日本実業団駅伝3連覇。学法石川高(福島県)教諭を経て、2009年東洋大監督就任。箱根駅伝3度優勝。福島県出身。

2018/09/09掲載

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