秋の彼岸 心こめ、お墓参りを
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 3月の春分の日と9月の秋分の日を中心にそれぞれ1週間を、春の彼岸、秋の彼岸といいます。仏教では極楽浄土は西方にあるといわれ、太陽が真西に沈むこの時期に亡き人の霊を供養すれば、極楽浄土に生まれ変わることができるという信仰により、ご先祖様やご縁のある方のお墓参りや、彼岸会の法要が行われています。

 彼岸とは、川の向こう(彼(か))の岸を指し、立派な心で迷いのない生活をする世界で、ご先祖様の暮らす極楽浄土のことも示しています。川の此方(こちら)の岸、迷いや苦悩している世界を此岸(しがん)といいます。迷いの此岸から迷いのない彼岸に渡るための方法として、六つの行いが仏教では説かれています。

 その第1番目にくるのが布施の行いです。布施とは物や力、心でも惜しみなく人々のために役立つように使い、その見返りを求めない心と行動のことです。

 今年は西日本豪雨や台風、地震による被害が各地でおき、多くの方々が犠牲になり、被害にあわれた大勢の人たちが現在も苦しんでいます。

 そんな中で被災者の皆さんの心を癒やし多くの人たちに勇気を与えたのが、スーパーボランティアと呼ばれている尾畠春夫さんの活動です。西日本の豪雨災害で広島に向かう予定だった尾畠さんは、新聞で藤本理稀(よしき)ちゃんがまだ行方不明になっていることを知り、「小さな命を助けたい」と山口へ向かい、翌朝理稀ちゃんを発見し無事家族に引き渡しました。

 祖父からお風呂を勧められた尾畠さんは「私はボランティアだからそうゆうものはもらえません」と断り、軽ワゴン車に食料や水、寝袋や生活用品を積み、助ける相手側に一切迷惑をかけない自己完結、自己責任が信条だといいます。

 数日後には広島の西日本豪雨被災地で汗を流す姿が放送されていました。支援の様子はとても78歳とは思えない動きで、手早に土のうをつくり、若いボランティアたちを統率し活動していました。

 自宅にいるときは身体作りに毎朝8キロを走っているそうです。尾畠さんの、布施の行いはとてもハードルが高くて普通の人にはできるものではないと思いますが、お釈迦(しゃか)さまは「何もなくても施しはできますよ」と示しています。

 誰にでも分け隔てなく笑顔や柔らかい言葉で接する、バスや電車に乗っている時に体の不自由な人や年配者に席を譲る、無理をせず、あまり難しく考えないで、今自分ができる範囲内で世のため人のために行動する―。それが布施の行いではないでしょうか。

 秋の彼岸は、普段より少々香りの良いお線香や、毎日世話をして大切に育てたお花などをご持参しお墓参りをされたなら、その真心にご先祖様はさぞかし喜ばれることでしょう。



宝積寺住職 西有孝裕 甘楽町轟真

 【略歴】曹洞宗の大本山、永平寺(福井県)で3年間修行後、1985年から現職。富岡甘楽地区の曹洞宗寺院でつくる第13教区の前教区長。駒沢大仏教学部卒。

2018/09/21掲載

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