障害者雇用率 共に働き、共に生きる
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 「共生社会」を、障害者等が、積極的に社会に参加・貢献していくことができる社会であるとすれば、障害者が働くということは、共生社会そのものと考えています。障害者が社会においてその役割を果たしていくとともに、賃金を得て生活するという障害者の自立にも結びつくものといえるでしょう。

 そのために、障害者雇用促進法は、一定の規模の従業者を抱える民間企業に、2.2%の障害者を雇うことを義務付けています。また、国や地方公共団体などには2.5%の障害者を雇うことを義務付けています。この仕組みを障害者雇用率制度と言っています。雇用率制度の対象の障害者は、身体障害、知的障害、精神障害(発達障害を含む)をもつ者です。基本的には、障害者手帳を所持しているということです。

 最近、この法定雇用率を達成していたとされていた国の機関が、実際は、その数を水増ししていたとして批判されています。民間企業には、厳しい雇用率を課しておいて、自分たちは障害者とは認められない人を雇って達成していたと、見せかけてきたということかもしれません。

 さて、法定雇用率とは、一体何のためにあるのでしょうか? 働く能力のある障害者が、さまざまな理由で働けない状況を少しでも改善して、働く機会を得るためにある制度といえるでしょう。

 2006年に成立した障害者自立支援法(現在は障害者総合支援法)で、就労移行支援事業が創設されました。民間企業等で働ける潜在的能力をもつ人が、実際には施設や作業所で福祉的就労をしているので、民間企業等で働けるよう一定の期間支援する事業です。本年度からは、民間企業ですでに働きはじめた障害者の定着を目的とした支援事業もスタートしました。

 障害者に働く能力があっても、企業はどのように本人の能力を引き出せるかの方法がわからず、適切な環境を用意する自信がなければ雇用に二の足を踏みます。また、雇用率達成のために、無理して障害者を雇い、適切な仕事が用意できなければ、たんなる数字合わせです。

 今後、障害者雇用率制度の在り方や、何%の法定雇用率が適切であるかなど根本的な議論が必要となるでしょう。その際、働く能力がありながら、そのチャンスの少なかった障害者が実際に職を得ているという事実は、評価できるところです。

 障害者雇用率制度の課題を通して、障害者が働くことをもう一度根本から考える時期かもしれません。企業等にとって障害者は、障害のない他の従業者と同じ価値をもつ大切な労働者であるという認識も生まれてきました。法的雇用率が、このような機会となり、障害をもつ人が活躍できる社会をつくっていきたいと考えています。



上智大総合人間科学部社会福祉学科教授 大塚晃 高崎市八千代町

 【略歴】重度知的障害者施設指導員、厚生労働省専門官を経て現職(障害者福祉論担当)。主な研究テーマは発達障害者などの地域生活のためのシステムづくり。高崎市出身。

2018/09/24掲載

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