禁煙と医療の未来 アプリで治療する日へ
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 今年6月、東京都の受動喫煙防止条例が可決、さらに7月には受動喫煙防止法が参議院本会議で可決した。日本では「ニコチン依存症」として2006年から保険適応の対象になっている。

 喫煙が健康によくないということを知らないという人はもはや少ないであろう。わかっていてもたばこを辞められない理由はたばこに含まれるニコチンに強い依存性があるからだ。近年普及して来た加熱式たばこにも同様にニコチンが含まれている。医学的には喫煙をやめられない状態をニコチン依存症として捉え、禁煙外来として治療の対象となっている。

 今回は、禁煙治療の新たな選択肢として「禁煙治療アプリ」を紹介したい。医療において今、治療用ソフトウエアという新たな選択肢が加わろうとしている。トップランナーの株式会社キュア・アップ代表取締役の佐竹晃太氏に話を聞いた。

 佐竹氏はもともと呼吸器内科医で、中国上海でMBAを取得、その後米ジョンズホプキンス大公衆衛生大学院で医療インフォマティクスの研究に従事、アメリカでは糖尿病治療アプリが医薬品と同等の効果を立証し、治療ソフトウエアとして承認を受けていることに衝撃を受けた。治療アプリという概念は日本ではまだなく、危機感を覚えると同時にある意味チャンスと捉え、帰国後、株式会社キュア・アップを立ち上げた。

 禁煙治療の補助アプリ「CureApp禁煙」、非アルコール性脂肪肝炎(NASH)治療の「NASH App」、高血圧治療の「HERB」などを開発、現在「CureApp禁煙」は慶応大医学部と治験を開始しており、「NASH App」は東京大付属病院と、「HERB」は自治医科大と臨床試験を行っている。

 禁煙治療として禁煙外来がある。禁煙補助薬を用いながら、12週間、計5回通院のプログラムで、ちゃんと通院継続した場合の禁煙成功率は80%以上と言われている。問題は、5回の通院日以外は原則本人一人で禁煙治療を継続する孤独な治療であることだ。この医療者の目が届かない治療期間を「治療空白」と呼び、目を付けた。

 「CureApp禁煙」はこの禁煙外来を補助する。禁煙外来の通院日には今まで通り医療者が治療継続サポートとし、さらに治療空白の期間はアプリで治療継続サポートする。既存の禁煙外来の治療の上乗せ効果が狙いだ。

 ソフトウエアであろうと治療効果が認められるのであればそれは医療機器である。日本でも14年からプログラム単体で医療機器として薬事承認を認められる制度ができた。特にスマートフォンは日常生活で最も身近な電子機器の代表で、生活習慣や行動変容がキーとなる疾患とは相性が良い。アプリが処方される時代は遠くないだろう。



お茶の水循環器内科院長 五十嵐健祐 東京都千代田区

 【略歴】老年病研究所附属病院などを経て、2014年に東京都内で開業。デジタルハリウッド大大学院専任准教授。高崎市生まれ。高崎高―慶大医学部卒。

2018/09/26掲載

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