登山のすすめ 自然を謳歌し健康増進
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 「超高齢化社会到来」といった文言で悲観的な論評もまま目にしますが、群馬県の山々を歩きながら人生を謳歌(おうか)している元気な中高年の方々を目にすると、日本の健康長寿社会はなんてすばらしいんだろうと誇らしく思います。

 もちろん、「下りで膝が痛くなる」とか、「若い時のスピードでは登れない」などの不安をお持ちの方は多いと思いますが、歩行スピードや行動時間、道具や水分補給計画などをそれぞれの身体的状況にあわせたスタイルとすることで、不安を抱えながらもハツラツと活動しておられる方は少なくありません。街中のウオーキングだけでなく、山も登れる元気な高齢者がたくさんいることは人口高齢化先行国として他の国のお手本となるでしょう。

 山歩きは時間つぶしのレクリエーションという方、風景を楽しむ旅行の一環という方もおられますが、「自分の健康管理のために毎週欠かさず山歩きをしている」といったふうに、「山歩き」を健康増進のために積極活用している人は意外と多いと思われます。空気が清浄な自然の中で、雄大な景色を楽しみながら体を動かし、汗を流すことは、体にも精神にもプラスに作用すると考えてよいでしょう。

 欧米ではGreen Exerciseという言葉があり、緑豊かな環境で運動すると、屋内やグラウンドで同じ運動をするよりも健康増進に効果的だという研究成果が報告されています。

 一方、「中高年登山者の遭難急増」とか「山中での病死」といったニュースも珍しくないことから、体力や技量に見合わない登山で遭難したり、体を壊す人もいます。警察庁や各地の県警の発表する統計「山岳遭難の概況」に遭難原因の内訳があります。昭和30~40年代の登山ブームの頃は山岳遭難と言えば、岩場からの転落、急峻(きゅうしゅん)な雪渓での滑落、雪崩など、ルートの困難さや気象要因によるものがほとんどでした。

 しかし、昨今の統計では、道迷い、疾病の悪化なども主要な遭難原因になっていて、転落、転倒などもいわゆる岩場ルートではなく、尾瀬の木道や縦走路のちょっとした段差あるいは階段などで発生しています。軽症例でも救助要請がなされる背景には、携帯電話で“気軽に”救助要請が出せてしまうことが関係しているという指摘もありますが、中高年層の登山者では、軽症でも自力下山が困難となることも事実です。

 いずれにしても、登山を健康増進につなげるには、まずは遭難しないこと、事故にあわないことが大切です。8月の防災ヘリコプターの事故を例に出すまでもなく、山岳救助自体にも大きな危険が伴います。自分の体を守るためばかりでなく、救助者を危険にさらさないためにも山に出かけるときは十分な準備と注意をお願いしたいと思います。



群馬大大学院医学系研究科教授 斎藤繁 前橋市古市町

 【略歴】日本山岳会群馬支部が主催する「健康登山塾」の講師を務める。著書に「病気に負けない健康登山」(山と渓谷社)など。群馬大大学院医学系研究科修了。

2018/11/08掲載

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