歴史と記憶 群馬でも地震は起きる
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 「群馬県は災害が起きないよね」という言葉をよく聞きます。本当でしょうか? 2018年8月に開催された減災・防災シンポジウム「いつかの地震に備える 平安時代の大地震、弘仁地震から1200年」に参加し、赤城山南麓から埼玉県北部にかけて地割れや液状化、地滑り、土砂崩れなどが発生していたと知りました。

 1923年の関東大震災、31年の西埼玉地震は本県に大きな被害をもたらしました。私は生まれておりません。2004年新潟県中越地震や11年東日本大震災で県内も建物被害や人的被害はありましたが、水や電気、水道といったライフラインに大きな被害がなかったため、多くの方々の記憶には「群馬県に地震が起きた」とは残っていないのではないかと思います。

 群馬県のホームページには、本県に地震を起こしうる断層による被害想定が載っています。①関東平野北西縁断層帯主部②太田断層③片品川左岸断層―です。最も被害が大きいと想定されているのは①による地震です。西埼玉地震もこの断層が原因であると言われています。

 想定によると、M8・1の地震が起き、高崎や藤岡、富岡で震度7となっています。人的被害は死者3130人、負傷者1万7740人、建物被害は全壊・全焼6万460棟、避難者は54万人と記されています。負傷者の10~20%が重症(重症とは、空気の通り道に異常がある方、呼吸状態に異常がある方、血圧が低下している方、声掛けなどに反応がない方)となると言われています。

 とすると、2000~3000人の重症者が発生することになります。県内には17の災害拠点病院がありますが、平時のキャパシティーを考えても上記重症者をすべて受け入れることは困難です。災害拠点病院自体も被災しておりますし、医療機関のスタッフも被災者ですので、ハード面・ソフト面で病院機能が保たれていない可能性があります。

 県内の医療機関で対応できない場合には、県外を含め被害の少ない医療機能が保たれている医療機関への搬送を行います。また、全国から医療者の支援が本県に派遣される仕組みになっています。

 地震によって負傷しなくても、全壊等の理由で、自宅で生活できない方々は避難所で生活を強いられることになります。避難所での生活は、災害ごとに改善されておりますが、日常より確実にプライバシーが確保されていない状況での生活となります。

 「群馬県で災害は起きないよね」という言葉は「記憶の中に、群馬県では災害が起きてないよね」が正しいのではないかと思います。しかし、地震の歴史からみて群馬県でも地震は起きます。われわれは、その時に備えて自宅でも仕事場でも対策を立てていかなければなりません。



前橋赤十字病院高度救命救急センター長 中村光伸 前橋市川原町

 【略歴】群馬大医学部附属病院脳神経外科医などを経て、2015年4月から現職。日本赤十字社県支部災害医療コーディネーターも務める。群馬大医学部卒。

2018/12/13掲載

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