遺伝子治療とは
 ヒトのからだは、細胞と呼ばれる目にみえないほど小さな構成単位が集まってできています。おとなで約60兆もの細胞からできているといわれますが、その一つひとつの細胞の中には核があり、核の中には両親から貰った遺伝子が入っています。遺伝子はデオキシリボ核酸、すなわちDNA(ディーエヌエー)の中に含まれていて、核の中にこん棒のような形にまとまった染色体としてしまわれています。
 細胞の中では遺伝子に刻まれた情報にもとづいてアミノ酸がつくられます。さらにアミノ酸はつなげられてタンパク質となります。ですから遺伝子は、細胞をつくるために必要なタンパク質をつくる精密な設計図である、ということができます。
 もし、その遺伝子に異常があった場合、身体にとって必要な働きをしなくなったり、有害なタンパク質を作ってしまうために、ヒトは病気になってしまいます。
 免疫に関係する酵素を作る遺伝子がなくなってしまう病気、ADA(エーディーエー)アデノシンデアミナーゼ欠損症は、細胞内に特定の物質が蓄積してDNA(ディーエヌエー)の複製が妨げられてしまう病気ですが、この原因は異常な遺伝子のために細胞が必要な働きをしないために起ります。だから正常な遺伝子を新たに補充して、必要な働きを取り戻せばよい…ということになります。この治療は北海道大学医学部で行われました。こうして遺伝子そのものを直接操作して、病気を治療しようというのが遺伝子治療なのです。
 これら遺伝子治療を行うためには、治療用の遺伝子を細胞にいれるための仕掛けが必要となります。この仕掛けをベクターと呼びます。これには主に、病原性をなくしたビールスなどを使うことが多いようです。病原性をなくしたビールスの中に治療用の遺伝子を入れ、治療する細胞に侵入させます。つまり感染させるわけですが、病原性はないので発病はしません。その時点で、ビールスが遺伝子を放出する性質を利用して治療用遺伝子を治療したい細胞に入れることができる、というわけです。
 遺伝子治療は、家族性高コレステロール血症、いわゆる神経難病、また、いろいろな癌など各分野に研究がすすめられており、多くの可能性を秘めた、期待される治療法といえそうです。
2000年2月