核酸を食べると若返る?
 核酸を配合した“健康食品”が販売されています。以前は中高年を対象とする「若返り」がうたい文句であったように思うのですが、最近は“ダイエット効果”をうたう商品もみられます。
 核酸が生物にとって重要な物質であることは言うまでもありませんが、食事から摂取する必要があるのでしょうか。“ダイエットに有効”というのも初耳です。それどころか、核酸をたくさん含む食品を多量に摂取すると高尿酸血症、さらには痛風の誘因にならないか、心配です。核酸を摂取すると何かいいことがあるのでしょうか。
 核酸は細胞の核と細胞質に含まれる生物の遺伝および成長に関与する高分子の有機化合物です。デオキシリボ核酸(DNA ディーエヌエー)とリボ核酸(RNA アールエヌエー)に大別され、DNAは遺伝情報を担い、RNAはタンパク質生合成に重要な役割を果たしています。
 核酸はヌクレオチドが多数重合したポリヌクレオチドですが、このヌクレオチドはヌクレオシドにリン酸が結合したものです。ヌクレオシドは塩基に糖が結合したものです。核酸の宣伝に2つのタイプがあるようです。一つは「若々しくありたい方に」という老化防止を暗示するもの。もう一つは「核酸ダイエット、カロリーコントロールに」と、ダイエット効果をほのめかすものです。「若々しくありたい方にDNA(ディーエヌエー)/RNA(アールエヌエー)。新陳代謝を繰り返す細胞。その細胞に含まれる核酸。この核酸の合成能力は20歳を過ぎるころから低下します」というキャッチコピーがありました。「核酸を摂取すれば若々しくなれる」とは一言も書かかれていないのですが、うっかり、そう読んでしまいそうです。
 核酸はタンパク質や炭水化物の代謝産物を原料として体内で生合成されるので、食事から摂取することが必須である栄養素ではありません。また、食事に含まれる核酸は分解されてから吸収されます。核酸をいくら食べても体内で核酸の合成量を増加させることはできません。
 最近、食事からヌクレオチドが供給されることは正常な免疫機能の維持に必要である、という研究報告が発表されています。ヌクレオチドを全く含まない精製飼料を与えられたマウス群では免疫機能が低下し、精製飼料に核酸やヌクレオチド、あるいは塩基を添加した群では正常、すなわち市販飼料なみの免疫機能を示した、というものです。
 しかし人間の場合、普通に食事をしていれば、一日に約1〜2gのヌクレオチドを摂取しているようです。ヌクレオチドを全く摂取しないと免疫機能が低下するかもしれませんが、余分に摂取しても免疫機能は高まりません。食事から摂取するヌクレオチドが免疫力を高めると解釈するのは誤りです。
 核酸やヌクレオチドの摂取がどのような意義を持つかは今後、明らかにされることでしょう。しかし現時点では宣伝にうたわれているような事実はありません。核酸摂取効果として若返りや痩身に言及することは危険なこともあります。高尿酸血症の人がこの種の健康食品を常用する場合です。「プリン体の摂取を控える」ことは核酸の摂取も控えること、と理解していない人もいると思われます。不注意な摂取を防ぐためにも「尿酸値の高い方、痛風の方は摂取しないで下さい」というような警告表示が必要ではないでしょうか。
1999年1月