レシチンは体によいか?
 “健脳食品”“頭脳食品”あるいは“高脂血症の改善に有効”とか、“脳へ働きかける栄養素”などとレシチンが宣伝されています。レシチンを摂取すると“頭が良くなる”のでしたら、すぐにでも飛びつきたくなるのですが、どうなのでしょうか。
 食事として摂取したレシチンはそのままでも吸収されますが、大部分は膵液中のホスホリパーゼによって、リゾレシチンと脂肪酸に分解されて吸収されます。リゾレシチンの一部は小腸粘膜細胞内でレシチンに再合成されますが、残りはさらにグリセロホスホリルコリンに加水分解後、血液中へ運ばれて、肝臓でコリンとなります。
 コリンは神経伝達物質アセチルコリン生合成の前駆体であり、リン脂質合成のための重要な材料です。コリンが欠乏するとレシチンをはじめとするコリン含有リン脂質の合成が阻害され、肝臓で合成された脂肪を肝臓外へ移送することができなくなり、脂肪肝を招きます。
 食事から摂取するレシチンはコリンの供給源と考えられてきましたが、これとは独立して肝臓を保護する作用がレシチンにはあるともいわれています。
 さて、いわゆる健康食品として市販されているレシチンは大豆油製造工程の副産物を製品化した大豆レシチンが多いようです。レシチンを摂取すると記憶力が向上し、痴呆の予防、治療に有効であるとかいわれているようです。
 これは、神経伝達物質であるアセチルコリンが血液中のコリンから合成されるので、レシチンを多く摂取すれば血漿コリンレベルが上昇し、ニューロンにおけるアセチルコリンの合成量が増加し、それが脳を活発化させる、という考えを根拠にしていると思われますが、脳の働く仕組みはそれほど単純ではありません。アルツハイマー病患者に、コリンまたはレシチンを投与して症状の改善をみたという報告もありますが、多くの研究報告は治療効果をほとんど認めていません。
 また、レシチンを大量(30g/日以上)に摂取すると発汗、嘔吐、消化管異常、下痢などの副作用を生じることがあるとのことです。しかし、“健康食品”としてのレシチンの摂取目安量は100〜250mg程度ですから、問題ない量といえましょう。むしろレシチンは卵黄や大豆に多量に、そして穀類や肉類に少なからず含まれています。穀類や肉・魚、卵、大豆などを食べる普通の食生活で1日に2g程度のレシチンは意識しなくとも摂取してますから、わざわざ“健康食品”としてのレシチンを摂取する必要はほとんどないように思われます。
1999年2月