ムロツヨシに「挑戦」という言葉はない あるのは「できる」という「覚悟」
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 俳優の小栗旬、ムロツヨシをはじめ、“テレ東史上最も豪華”と言われるキャスト陣でドラマ化される山崎豊子氏の代表作『二つの祖国』(23日、24日ともに後9:00~11:24※2夜連続)。1900年代、第二次世界大戦前・中・後の日本とアメリカ、二つの国の狭間で家族の絆を引き裂かれ、涙の別れを経ながらも未来を信じ、逞しく生き抜いた3世代64年の愛の物語。

【写真】福田雄一氏と蜷川実花氏の出演に驚くムロ

 本作では、「ここ数年、自称するようなものではないのですが、あえて“喜劇役者”を自称してきました。ムロツヨシが出ているならきっとふざけているだろう、という先入観を持って観てくださる方もいらっしゃると思うのですが、今回はふざけたシーンは1カットもありません。それは先に言っておきたいと思います」と、ムロは語る。

 「福田雄一さんの作品(『勇者ヨシヒコ』シリーズや『今日から俺は!!』など)だと、あて書き、あて演出をしてくれるので、いつものムロツヨシを上回るような芝居、いつもの逆、いつもと違う角度からのアプローチで演じることができるのですが、本作はいつもと全く違う印象を持つと思います」

 本作で、ムロが演じるのは、アメリカに生まれ、アメリカ人として育てられた日系二世・チャーリー田宮。小栗演じる同じ日系二世・天羽賢治とは、学生時代からの友人であり良きライバルであった。しかし、真珠湾攻撃にはじまる日米開戦が、彼らに残酷極まりない問いを突きつける。日本人として生きるのか、アメリカ人として生きるべきか…。アメリカ人であると同時に日本人であることに誇りを持つ賢治と、アメリカで成功するため日本人であることを捨て去ろうとするチャーリー。正反対の生き方をする2人の人生は、歴史の流れに翻弄されながらも交錯し、時に助け合い、時にぶつかり合ってゆく。

 アメリカ生まれ、アメリカ育ちということで、英語のせりふも多く、「日本でのびのびと育ってきてしまったので、難しかったですね。もしかしたら、僕が英語でしゃべるシーンは全部バックショットで、僕と声質の似ているネイティブの方が吹き替えている可能性は、まだ、ありますね(笑)。あと、5年、時間をいただけたら」と冗談めかしながらも、「自分にできるすべてのことをして、本番に臨みました。簡単ではなかったですが、スタッフと練習してきた自分を信じてやりました」。

 多くの人の命と暮らしが犠牲になった第二次世界大戦の時代をドラマで描くことも容易なことではない。

 「山崎先生の小説のドラマ化とはいえ、史実あっての物語です。当時の日系二世たちの身に実際に起きた出来事をベースにしているので、いまのせりふの言い方は、いまの表情は、いまの仕草は適切だったのか、と毎日自問自答しながらの撮影していました。これまで、戦争を描いた映画やドラマを観て、戦争でこんなことがあったのか、戦争はしたくないなと思ってきましたが、この作品で演じる側に立って、自分より若い世代に伝える側の責任というものを意識しましたね。伝えるべきことはすべて台本に書いてありますので、それをちゃんと表現できているか、一つひとつ確認しながらやっていました」

■活躍を支える半端じゃない覚悟と自己肯定力

 英語のせりふに、戦争という題材に、「いろいろ挑戦があったんですね」とムロに問うと、「僕は仕事で『挑戦』という言葉は使わないようにしているんです」と返した。「起用したのに、観てくれるのに、挑戦されても…と思っちゃうんですよね。仕事として引き受けたからには、挑戦ではなく、ちゃんと表現します、ちゃんとやります。自分の中で挑戦する心境であっても、言葉としてそれを使わないようにしているんです」。

 ムロの信念に触れた気がして、ハッとしていると、続けてこう語った。

 「僕は小劇場でずっとやってきたんですが、ある時、大きな劇場で上演される作品に呼んでいただいて、その時も『挑戦』とは言わず、『小劇場でやってきたことを大きな劇場でやるだけです』と言った。作品に呼ばれたからには、それだけの値がある、と信じてやる。そして、全力でやりきる。それをどう評価するかは、演出家やプロデューサー、観客の皆さん次第。もし、『よくなかった』という悪い感想があったら、それは自分の実力不足、覚悟不足だと、すべて自分で受け止める。逆に『よかった』という感想もそのまま受け止めるようにしているんです」

 本作の出演依頼については、プロデューサーからだけでなく、共演の小栗からも言葉(電話)をもらったという。

 「小栗くんからは『ムロさんと似ている部分が多い役なんで、ぜひ、台本を読んで、前向きに考えてほしい』と。台本を読んで、確かに、って思いました。自分が芸能の世界で生きていこうと思った時、どんな手段をつかってでもこの世界で食っていく、生き残ってやる、という意気込みでしたから。その覚悟を手に入れるのに、片足を突っ込んでから6、7年かかってはいるんですが…。

 この作品のチャーリー田宮も、真珠湾攻撃があって、日本との戦争がはじまって、日系人は強制収容される中、自分の人生をより良く生きるために、アメリカで成功するためなら日本人であることを捨て去ることもためらわない。そういった部分が多少似ていると、小栗くんは思ったんだと思う。自分が生きてきた意味、生きている意味を強く意識しているところは、自分と重なるな、と僕も思います」

 劇中でチャーリー田宮がその場の空気を和ますようなシーンは一切ないとのことだが、撮影現場では「私は真面目に芝居をしているんですが、相手役の女優さんが、カットがかかった途端に吹き出す、ということがありましたね。すごくシリアスなシーンだったりするんですけど、どういうことなんでしょうか?」と、周りのスタッフを見回して、笑いを誘っていた。

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